第34話

お試し
2,957
2021/06/09 09:42
(みなと)

三「こた、ちょっといい?」


小「うん、どうした?」

部活前にこたを呼ぶ



三「それ、キスマやんな?笑」

どうやって話をしようか、なんて考えてたら目線がいってしまったので言ってみる


小「気づいた?バレるって言われて軽くしか付けてくれなかった」


こた、キスマに興味なんかないやろ

三「強く付けて欲しかったの?」


小「先輩がからかわれるの面白そうだし笑」

あ、そっちね




三「…りょうがに何か言ったん?」

小「…りょうがに何か言われたの?」

質問を質問で返されるけど、こたは落ち着いた様子

高校に入ってから、こたはさらに精神的に落ち着いたと思う



三「まぁ、そうやけど…」


小「僕は大丈夫だよ、先輩もいるし」





三「…こた、好きじゃないなら先輩と別れなよ」


小「え?なんで?」

思いがけない言葉だったようで、こたが驚いている


三「だって、今までそんな仲良くしてるセフレなんていなかったやん?割り切ってたのに…俺らの為なら先輩も可哀想だし」


小「セフレじゃなくて彼氏だよ?」


三「名前なんてどうでもええねん、気持ちの問題。適当な人いないなら俺が見つけてくるから」



こたはちょっと黙った後

小「僕、先輩のこと前から知ってる。部活も入るつもりなかったから、こういう風にみんなで仲良くなる予定は無かっただけ」


三「入学前に会った事あるんや?でも、好きな訳じゃないでしょ?」








あの日、恋人のように過ごし、セックスをした後、ハッと我に返って…何してんのやろ、と思った


勝手に気分が盛り上がってしまったと思うと恥ずかしくて仕方ない


次に会ったらどんな態度で、どんなセックスをすればいいのか分からない



なぜ恋人ごっこみたいな事になってしまったのか考えると、元々は勃たなくなった事が原因だった

名前を呼ばれた時に、気持ちが昂った
誰かに自分を求めて欲しかっただけ

恋人でもないのに、いつの間にか日々の態度も何となくそんな感じになっていたように思う


勝手にその気になっていた俺をこたはどう思っただろうか

考えるだけで恥ずかしい

割り切ってセックスせなあかん…



だけど1つ問題がある
恋人らしい雰囲気もなく機械的にセックスしたら勃たないかもしれないってこと

屈辱の1か月間を思い出してしまう


あんな恥ずかしくて惨めな思いはしたくない





ガードレールに寄りかかって、もうすぐ出てくるであろう人物を待つ


到着して10分ほどで店からりんたろうが出てくる

り「お待たせ!」

清「あ、うん。急にごめんな」

とりあえず家行こう、と歩き出すりんたろうの横に並ぶ


り「あの説明じゃ色々分かんないんだけど笑」

清「うん、そうやろな」

り「なんで付き合ってるフリしてんの?」

清「…その方が都合が良かったから」


り「ふーん?でもきよが勃たなかったって話、びっくりしたな笑」

清「いや、ほんま屈辱やで、笑い事やないからお前に頼んでる」

り「俺はいいけど、きよがそんな頼み事したのが意外すぎて…付き合ってないやつとセックスするタイプじゃないじゃん」


清「…また勃たんかったら困るやん、何とも言えない空気になって気まずかったし」


り「え?ちょっと待って!フリなのにこたろうくんとえっちしてるの?勃たないって、えっちの時に勃たなかったの!?」

矢継ぎ早に質問責めに合う



清「…色々事情あんねん」

り「え、単に勃たないからお試しするんだと思ってたけど!」


清「それはそうやで…」


り「ちょっと色々驚きすぎて」

りんたろうに色々突っ込まれたけど、ちゃんと説明できる事は少なかった




り「じゃあこたろうくんで試すで良くない?俺でいいの?」


清「いや、俺のプライドが」

言い訳したけど、本当はちょっと頭を冷やしたかった


り「あはは、何それ、俺なら失敗してもいいの?笑」

清「何でもないやつで試したかったから」

り「それ俺に失礼じゃない?俺は嬉しかったのに」

清「え?お前、俺の事好きなの?」



り「いや、振られたから諦めてたけど、こんな話がくるとちょっと期待はするよね?」


清「…ごめん、そういうつもりはなくて。全く知らん奴とは出来ひんし…」

こんな事、前の俺じゃ考えられなかった
色々と俺はどうかしてる

りんたろうも笑ってるけど俺への見方が変わっただろう


り「んー、いいよ、分かった。きよがこんな事頼めるの俺だけだもんね」





りんたろうの部屋に入り、ベッドに座る




清「あの頃と同じようにはせんよ?何でもない奴と出来るか、ってお試しやから」



りんたろうは何か言いたそうな顔をしたが




り「分かった、でも途中で止めないでね」

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