第5話

互いの気持ち
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2021/01/14 16:24
(taiga side)

あれから一年たった。俺は学校に行けていない。

幼い頃に発病した白血病が再発し、抗がん剤治療を受けていたが、つい3日ほど前、余命宣告を受け残り少ない毎日を精一杯生きている。

北斗に言われた「好き」の返事をまだ返していない。返しに行こうと家を出て少しして、めまいと動悸で倒れ、この状態だ。

ガラガラ。ドアが開き、担当医が入ってくる。

医「どうですか?調子は」

「今のところ落ち着いています。食欲はあまりないですが…。」

医「今週の土曜日に最後の外出許可がでます。一日だけですが。」

「ほんとですか!?ありがとうございます。ありがとうございます。」

そう、北斗に死ぬ前に会って、俺の気持ちを伝えたい、そう思ってなんども申請をしていたものだ。

まぁ、北斗の気持ちは変わってしまっているかもしれないが。

それでもいい。悔いが残らないように死にたい。


(hkt side)

あれから一年たつが、片時も大我のことを考えない日はなかった。

今どこにいるのかわからない。一応、在籍はしているようだが、そこから先のことはプライベートのことらしく、先生は教えてくれない。

大我がいないだけで、俺の毎日は色を失ってしまったみたいで……。

そんなことを考えていたら、ピコンッとスマホがなった。

「っつ!?」

声が出そうになった。なぜなら、その送り主は、大我からだったからだ。

“北斗。久しぶり。連絡取れなくてごめん。いきなりなんだけど、今週の土曜日って会えるかな?”

文面を見る限り、前の大我とは変わっていなくて安心した。それよりも、久しぶりに大我に会えることの高揚感で胸がいっぱいだった。

“大我、久しぶりだな。俺も、なかなか連絡できなくてゴメンな。土曜日、空いてるよ。”

そう返した。これを逃すともう二度と大我には会えない、そんな予感がした。

そこからは、何時に待ち合わせするか、どこに行くか、など、ポンポンと予定が決まっていった。

そして、大我から

“その日、北斗の家に泊まりたいんだけど、いいかな?”

そんな返信がきて、俺は、

“もちろんいいよ。楽しみだね”

そんなふうに返信をした。




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