聖華学園。
今日から私はここに通うことになるのか。
受験で落ちた私のもとに突如舞い込んできた進学のスカウト。
少し不思議な感じもしていたけど、ここしかいくとこないし、聖華学園は地元でも有名なお嬢様、お坊っちゃま学園だったので安心だろうと思ったのだ。
私は本気で心配だったのだ。
お母さんを一人にしたら無理ばかりしそうで。
お母さんは笑って言う。
寮へ持っていく荷物をお母さんと分担して運びながら学園へと向かう。
入学したら基本的に学園を出ることはない。
卒業までお母さんに会うことはなくなるのだ。
学園の敷地は高い塀に囲まれていて、出入口となる物は正門しかなかった。
聖華学園は敷地がとにかく広く、敷地内にいろんなお店があり、ちょっとした街のようになっていた。
今日から私はここに住んでここで学習することになるのかぁ。
ワクワクした気持ちもあったが、ずっと二人三脚でやって来たお母さんと別れるのは本当にさみしい...
お母さんが持ってくれていた荷物も受け取り、大きな門を通る。
ここから先はよっぽどのことがない限り保護者の立ち入りは禁止されている。
門が見えなくなる手前まで歩いた頃、遠くからお母さんの声が聞こえた。
そう叫ぶお母さんに向かい、私は大きく手を降った。
お母さん、私は大丈夫。
ちゃんと、立派になって戻ってくるから。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!