「Ladies and gentlemen.みなさんお待ちかね。とても可愛い私と、とてもかっこいい彼の登場だよ〜!」
声のした方に顔を上げると、メイド服の様な服を着ている、黒髪の胸元まであるツインテールの女の子が立っていた。
年齢は…僕と同じくらいだろうか。
彼女は…どこかで見た事あるような顔をしていた。
それとは裏腹に、彼女の見せる殺気は、“ジャック”なんかとは比べ物にならない程に強く、間違いなく、今までで見て来た中で一番と言っていいだろう。
こいつ…一体…何者なんだ?
「……萌…」
「にゃっはは!!お姉ちゃん!!久しぶり!!せっかく会いに来たからぁ〜大好きなぁ〜お姉ちゃんとのぉ〜再会を〜喜びたい〜ところだけどぉ〜。
………本名で呼ぶんじゃねーよ。偽善者が」
ツインテールの女子はロキさんを赤い瞳で睨み、更に殺気を強くした。
……ん?
…あれ?
お姉ちゃん?
今、ロキさんの事をお姉ちゃんって呼んでなかった?
「“お姉ちゃん”って呼ばないで。私は“ロキ”、貴方が本名で呼んで欲しくないのなら、そう呼びなさい。」
「あ"?テメエから吹っかけてきたんだろ?謝れや!いくら、大好きな姉だからって許さねーぞ!!ロキさんよー!!」
しっかり呼んでんじゃん。
「おいおい。ムキになるなってクイーン…だっけ?確かそう呼ばれてたよな。まっ、せっかく会えたんだからさ、カリカリすんなよ。」
また…知らない人の声がし、その方向に視線を移すと、声の主の顔はなんとAさんそっくり!
姿はまるで死神のようであった。
「やっぱり来たかよ。…黒…」
「あ"!?黙れよクソ兄貴が!!
本名で呼ぶんじゃねーよ。学習しろ阿保が」
???
ん???
え、ちょっと待って。
一旦状況を整理しよう。
えーと、
ロキさんが…ツインテールの女の子(クイーン?)の姉で、
Aさんが、口悪い男の子の兄…。
……帰りたい。(胃痛)
ー数分後
「も〜いいよ。お姉ちゃんと話してるとキリがない!私達が会いに来たのは、そこにいる学くん?とか言う奴だし。」
思わぬ飛び火!!
つか、名前もろくに覚えてないのに、僕に会いに来たのかよ…。
「僕に何の用ですか?」
「んー。用があったんだけどぉ〜。学くんがぁ〜美味しそうなぁ〜肉体してるからぁ〜忘れちゃった♡テヘッ」
食用の肉として見て褒められても嬉しくないな。
彼女が、目を輝かせて言っているところには恐怖を感じるが、後々考えてみれば、この状況に冷静でいられた自分自身もそれなりに狂っていたと思う。
「まっ、と言う訳だ!!」
そう、Aさんの弟が言うとロキさんの妹と一斉に僕に飛びかかってきた。
この時、ロキさんが少し微笑みを浮かべていた事をよく覚えている。
その時僕は、彼女が“ただ者ではない”と、脳がしっかりと理解した。
心に浮かび上がった懐かしさと共に…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。