2人になって、沈黙が走る。
少しして、七花に話しかける。
恐怖でなのか、少し冷たく白い俺より小さな手をそっと握る。
その手を自身の口まで持っていき、手の甲にそっと唇を触れさせた。
そんな都合の良いことは起きず、一向に目は覚めない。
ただ、早く目が覚めてほしいという思いが握った手から伝う事を期待するしかできない。
七花を見つめてると背後からいきなり扉が開く音がした。
笑いながら先生はそう言う。
突拍子のない事を言われ、危うく椅子から落ちそうになった。
躊躇しながら言った。
多分自分の顔は、真っ赤だろう。
というか、七花が心配すぎて、水着を着てたことを忘れてた。
言い方は刺々しいけど、訳すと七花を守るための嘘をつけと言われた。
着替えから戻ったときは七花はすでに目覚めてた。
けど、触れないと何処かに消えてしまいそうな程弱々しくなっていた。
そして、あんなに自信満々だった姿は跡形もなく今はただ七花自身を責めてた。
自分は汚れてるたとか、ごめんねだとか。
欲しい言葉は違う。
ただただいつもの会話する時の言葉がほしい。
何度も否定しても、自分を責める。
だけど、七花が自分自身は彼女失格って言ったときは何かがふつりと切れた。
泣きたいのは七花なのに、涙ぐみながら言葉を無理に静止しようと抱きつく。
……大好きな恋人がこんなに苦しんでる姿は見たくない。
その一心で泣きながら七花を強く抱きしめた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。