それから三人で教室に戻り席に座る。
黒板には端の方に " 新川 " と書かれていた。
日直の仕事はだいたい分かる。
日誌書きのみ。
その日誌を放課後担任報告。
それだけだけど、たまに雑用として使われる。
心のこもっていない応援を頂きました。
日直とか…
私にしちゃ、新学期のあるある。
ほんと、私も山崎が良かった。
後ろから来たはな。
これは…!
はなと亜嵐が二人っきり…?
はなの顔はちょっと赤くなって嬉しそう。
よしよし。
ほんとこの二人のお世話は大変。
今日も元気のいい関西弁でスタートした授業。
そう生徒達に問いかける。
みんなは え ~ 。っていう意見や いいよ など様々。
そして、くじ引きの席替え。
1人ずつくじを引いていき
悲しむ人や友達と喜びを分かちあっている人。
まぁ、私は喜びを分かち合う人に───────
はい、見事に私だけ遠くなりました。
悲しむ側になりました。
亜嵐とはなはまさか隣。
しかも、廊下側。
1番暇なところだし。
そこで授業は終わり、休み時間。
せめてでもはなの近くがよかった。
落ち込んでいる気持ちを引き締めて先生の所に。
いやいや、ありえな…
行ってしまった…
置いてこればいいのに。
35人分のノートを両手に抱えて三階階段を降りる。
たまたま、私のノートが上だった。
恨みます!
恨んだら根に持つタイプ。
階段を降りていくと一年生がわちゃわちゃしてて
私達の廊下とは違う雰囲気。
すると
後ろから聞き覚えのある声。
三階から降りてきて私の目の前にくる。
ほら、行きますよ。
って手招きする。
その手は大きめのカーディガンに隠れそうになってて
いわゆる、萌え袖。
なんか…いい。
何考えているか分からないこの人。
言われるがままについていった。
前を向いて階段を降りてたら
一瞬、両手にかかえるノートが重くなった。
私のノートを手に取ってマジマジと見る。
黄緑のキャンパスノート。
表紙には 新川あなた と記してあるから
そりゃ、わかるよね…
ダメって言ったのに勝手に開く。
おい!
私、今ダメって言ったんだけど、
そ、そんなこと急に言われて…ちょっと照れる。
私のノートを見てケラケラ笑う。
くっそぉ…!
むかつくわー。
いい後輩…って思いかけた私に一発かましたい。
今すぐにでも取り上げたいのに両手が塞がって取れない。
まだ見る気か…
ペラペラページをめくって真剣な顔で見る。
もう、やめて…
いい加減呆れてきてしまって放置。
それから無口になった玲於。
って言ってもまだ見てる。
はぁ…
そう言うと目を輝かせて
中務先生の机を探して置いた。
はぁ…疲れた。
てか、なんなの。
Sなんすね。って!!!
あんたの方がよっぽどSだわ!
態度が表に出たのか先生に 「大丈夫?」って聞かれた。
あ、やべ。笑
職員室から出ると
当たり前のことを言ったみたい顔してるけど
その顔がちょっと…ちょっとだけかっこよく見えた。
ここまで後輩に懐かれたのは
初めてでどう接していいか分からなかった。
「あなたさん」 「好きっす」
ちょっとドキリ。
と言うと嬉しそうな顔してニヤニヤしてる。
と、私に向かって笑った玲於の顔は一段と
かっこよく見えてしまった。
なんか自分でもおかしくなって前を向いた。
なになに、その顔。
え、まじ? いないの!?
とでも言いたげな顔は!
と、考えていた私の考えと裏腹に
なに、ちょっと可愛いって思った。
てか、なんで亜嵐の存在を知ってんの。
もしやストーカーされてる!?
こいつ、私の心を読めるのか!?
クックックック…と肩を揺らして笑った。
そう呟いた玲於の言葉の意味は理解出来なかったが
玲於の左手が私に向かって横に揺れた。
すると、私の右手が自然に上がって横に揺れた。
その瞬間がスローモーションに見えた。
玲於の笑顔も。
と、手が振り終わると現実に戻されたみたいに
通常の早さに変わる。
もし、私が暇だったら何だったんだろ。
気になって仕方がない。
聞けばよかった…
時計を見るとあと二分。
次は、数学…だったような…?
遅刻するとあの先生怖いからなぁ。
見かけは凄いイケメンなのに。
学校でもその人を好きになる生徒は山ほど。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。