第5話

ノート運び
2,745
2018/11/18 04:20
それから三人で教室に戻り席に座る。
亜嵐
なぁ、今日あなた日直じゃない?
あなた

え?

黒板には端の方に " 新川 " と書かれていた。
あなた

ほんとじゃん!

日直の仕事はだいたい分かる。


日誌書きのみ。


その日誌を放課後担任報告。


それだけだけど、たまに雑用として使われる。
亜嵐
頑張れ ~ 。
心のこもっていない応援を頂きました。
あなた

ありがとう ~ 。

日直とか…


私にしちゃ、新学期のあるある。


ほんと、私も山崎が良かった。
はな
今日なんかあるの?
後ろから来たはな。
あなた

今日私日直みたいで…

はな
まじか!
あなた

ほんと…嫌だ。

はな
帰り待っててあげるよ。
亜嵐
そうだな、
これは…!


はなと亜嵐が二人っきり…?
あなた

別に大丈夫!
結構かかるかもしれないし…!

亜嵐
大丈夫だよな?
はな
あ ~ 、うん…
あなた

大丈夫大丈夫!
先二人で帰ってて。

はなの顔はちょっと赤くなって嬉しそう。
はな
なら、そうする…?
亜嵐
ん ~ 、そこまで言うなら…な?
あなた

うん!
ありがとうね。

よしよし。


ほんとこの二人のお世話は大変。
中務先生
はい ~ 、授業始めんで ~ !
今日も元気のいい関西弁でスタートした授業。
中務先生
席替えなんやけど、くじ引きでええか?
そう生徒達に問いかける。


みんなは え ~ 。っていう意見や いいよ など様々。
亜嵐
その方が簡単だからいいよね。
あなた

うん

そして、くじ引きの席替え。
1人ずつくじを引いていき


悲しむ人や友達と喜びを分かちあっている人。


まぁ、私は喜びを分かち合う人に───────









はな
なんであなただけ離れちゃうんだろ。
はい、見事に私だけ遠くなりました。


悲しむ側になりました。


亜嵐とはなはまさか隣。
亜嵐
どんまい。
あなた

最悪…

しかも、廊下側。
1番暇なところだし。
中務先生
はい、座れ ~ 。
これからはこれで行くから。
間違えて前の席に座らんように!
以上!
そこで授業は終わり、休み時間。
せめてでもはなの近くがよかった。
あなた

はなぁぁぁ。

はな
あなた ~!
あなた

私、ホントついてない…

はな
大丈夫だよ、私休み時間絶対来るし。
亜嵐
俺も来てやる。
あなた

はなだけで十分 ~!

亜嵐
なんだと。
はな
あ、あなた、先生よんでる。
あなた

え!

落ち込んでいる気持ちを引き締めて先生の所に。
あなた

なんですか?

中務先生
このノートさ、
職員室の俺の机に置いといて欲しい。
あなた

え?

中務先生
今から違うクラスやねん。
戻っとる暇無いで。
いやいや、ありえな…
中務先生
ほな、よろしくな!
行ってしまった…


置いてこればいいのに。
あなた

も ~ 。

35人分のノートを両手に抱えて三階階段を降りる。


たまたま、私のノートが上だった。
あなた

くそぉ…中務先生め…

恨みます!


恨んだら根に持つタイプ。
階段を降りていくと一年生がわちゃわちゃしてて


私達の廊下とは違う雰囲気。
すると
玲於
あ、あなたさん。
後ろから聞き覚えのある声。
あなた

あ、玲於。

三階から降りてきて私の目の前にくる。
玲於
持ちましょうか?
あなた

いや、大丈夫。

玲於
なら、一緒に行きます。
あなた

へ?

ほら、行きますよ。


って手招きする。


その手は大きめのカーディガンに隠れそうになってて


いわゆる、萌え袖。


なんか…いい。
何考えているか分からないこの人。


言われるがままについていった。
あなた

何考えてんの?

玲於
別に普通ですよ。
あなた

ふ ~ ん 。

前を向いて階段を降りてたら


一瞬、両手にかかえるノートが重くなった。
あなた

なに!

玲於
これ、あなたさんのノートっすね。
私のノートを手に取ってマジマジと見る。


黄緑のキャンパスノート。


表紙には 新川あなた と記してあるから


そりゃ、わかるよね…
あなた

そうだけど、見ないでくれる?

玲於
え、なんでですか?
あなた

なんでって…汚いから。

玲於
見る。
ダメって言ったのに勝手に開く。


おい!


私、今ダメって言ったんだけど、
あなた

見ないでって!

玲於
あなたさん、字綺麗!
あなた

え?

玲於
わかりやすい。
そ、そんなこと急に言われて…ちょっと照れる。
あなた

そ、そう?

玲於
けど、字の跡もうちょっと
上手に消した方がもっと綺麗です。笑
私のノートを見てケラケラ笑う。


くっそぉ…!


むかつくわー。


いい後輩…って思いかけた私に一発かましたい。
あなた

うるさいわねっ!
余計なお世話だから ~ 。

今すぐにでも取り上げたいのに両手が塞がって取れない。
まだ見る気か…


ペラペラページをめくって真剣な顔で見る。


もう、やめて…
いい加減呆れてきてしまって放置。


それから無口になった玲於。
あなた

あの、職員室着いたから。
返してもらえない?

って言ってもまだ見てる。


はぁ…
あなた

お ~ い、

玲於
あなた

玲於 ~ ?

そう言うと目を輝かせて
玲於
待ってました。
あなた

何を?

玲於
あなたさんが名前呼んでくれること。
あなた

待つことなのかな。

玲於
なかなか呼んでくれないし。
あなたさんって意外とSなんすね。
あなた

さ、さぁ…どうかなぁ…?

中務先生の机を探して置いた。


はぁ…疲れた。


てか、なんなの。


Sなんすね。って!!!


あんたの方がよっぽどSだわ!
態度が表に出たのか先生に 「大丈夫?」って聞かれた。


あ、やべ。笑
あなた

失礼しました…

職員室から出ると
玲於
やっと来た…
あなた

なんでいるの?

玲於
あなたさんのこと待ってたから。
当たり前のことを言ったみたい顔してるけど


その顔がちょっと…ちょっとだけかっこよく見えた。
あなた

…待たなくていいのに。

ここまで後輩に懐かれたのは


初めてでどう接していいか分からなかった。
玲於
俺、あなたさんの反応好きっす。
「あなたさん」 「好きっす」


ちょっとドキリ。
あなた

ど、ど ~ も。

玲於
なんかいじりがいがある反応。
あなた

思ったんだけど玲於の方がよっぽどSでしょ。

と言うと嬉しそうな顔してニヤニヤしてる。
あなた

なに?

玲於
2回目…!
と、私に向かって笑った玲於の顔は一段と


かっこよく見えてしまった。
あなた

そ、そんなこと数えてたの…

なんか自分でもおかしくなって前を向いた。
玲於
はい。
あなた

あ…そう…

玲於
あなたさん、今日の放課後暇ですか?
あなた

暇じゃないですね。

玲於
もしや、デートっすか?
あなた

ごめん、私彼氏いないから。

玲於
まじ…
なになに、その顔。


え、まじ? いないの!?


とでも言いたげな顔は!
と、考えていた私の考えと裏腹に
玲於
いると思ってた…
あなた

え?

玲於
あ、あなたさん…その…美人だからさ
いつも一緒にいる…男性?とかと…
なに、ちょっと可愛いって思った。
あなた

あぁ、あれは亜嵐っていって私の友達だよ。

てか、なんで亜嵐の存在を知ってんの。


もしやストーカーされてる!?
玲於
その顔俺がストーカーしたとか思いました?
あなた

は!

こいつ、私の心を読めるのか!?
玲於
図星…笑
クックックック…と肩を揺らして笑った。
あなた

うるさい。

玲於
なら、一安心…
そう呟いた玲於の言葉の意味は理解出来なかったが
玲於
俺、次体育なんで行きます。
あなた

あ、うん。またね。

玲於
また。
玲於の左手が私に向かって横に揺れた。
すると、私の右手が自然に上がって横に揺れた。
その瞬間がスローモーションに見えた。


玲於の笑顔も。
と、手が振り終わると現実に戻されたみたいに


通常の早さに変わる。
あなた

なんだこれ…

もし、私が暇だったら何だったんだろ。


気になって仕方がない。
聞けばよかった…
あなた

やば、もうすぐ授業じゃん!

時計を見るとあと二分。


次は、数学…だったような…?


遅刻するとあの先生怖いからなぁ。


見かけは凄いイケメンなのに。
学校でもその人を好きになる生徒は山ほど。

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