第29話

99%
2,025
2018/12/09 09:51
終わった…


夢の一週間。
短かったような長かったような。


いや、短すぎた。
玲於
はぁ…
ため息。


したくなくても出るから。


あ ~ 、これからどうしよ。


俺、頑張れねぇよ。


あなたさん無しじゃ無理。
さっきまで繋いでいた手を見る。


まだ、あなたさんの手の感触があって辛い。


ちっさくて、あったかい。


その体温が俺にも伝わって熱かったのに。


ちょっと冷めた。
でも、これってあなたさん俺の事好きじゃないんだよな。


好きだったらこれからもずっと付き合えるのに。
玲於
隼 ~ …
いつもの公園のベンチに座って


いつの間にか俺は携帯を開いて隼に電話してた。



プルプルプル…



小森隼
はいは ~ い?
玲於
小森隼
なに?どうした?
玲於
今、無事終了した。
小森隼
あ ~ 。
察したような受け答え。
小森隼
どうだった?
玲於
いや、もう言葉に表せない。
小森隼
幸せだったんだな。
玲於
それは、もう…
2時間ぐらい時間くれたら語れる。


あなたさんとの出会いから今日まで。
小森隼
あ ~ あ、これから玲於の顔死んでるだろうな。
玲於
まぁな。
小森隼
あなたさんの存在めっちゃ大き…
玲於
俺の心は100%中99%はあなたさんだもん。
小森隼
1%はなんなの?
俺の事か。
玲於
なわけあるか。
小森隼
じゃあ、なんなの。
玲於
服とダンス。
小森隼
あ ~ 、なるほどね。
ほぼ、その二つに注ぎ込んでる。
小森隼
もう、いいの?
玲於
あぁ。
もう、諦める。


あなたさんとは関わらないし見もしない話さない。


それぐらいしないと諦めきれない。
小森隼
なら、そうしよ。
こうやっていつも俺の意見に賛成してくれてよ ~ 。


見直す。
玲於
なら、また明日な。
小森隼
ほ ~ い、おやすみ。
玲於
おやすみ。
通話終了。
見上げると夏っぽい夜空。
玲於
夏…か。
もう、夏なのか。


あなたさんは…夏嫌いって…
玲於
馬鹿っ…なんにも諦めきれてねぇじゃん。
いっつも考えてしまうのはあなたさんのこと。
諦めるも何も心にあなたさんがいんだから


ぜってぇ無理じゃん。
玲於
ど ~ しよ。
ベンチの背もたれに手をかけてもたれる。
そら
玲於じゃん。
急に俺の名前を呼ばれて振り返る。
玲於
そら…か
そら
悪かったね、私で。
玲於
いや、そういうことじゃ…
隣いい? って俺の隣に座る。


聞いても座ってんじゃん。
そら
何してるの?
玲於
あなたさんとの一週間が終わって余韻に浸ってる。
あ ~ 、あの先輩。


って納得してる。
そら
楽しかった?
玲於
楽しい超えた。
そら
じゃあ、なに?
玲於
幸せ…だった。
そら
良かったじゃん。
やけに、そらが素直。


いつもみたいにベタベタしてこないし


俺があなたさんの事話しても怒ったりしない。
玲於
なんか…あった?
聞いてみると
そら
私、決めたの。
玲於の幸せを一緒に喜ぶって。
玲於
え?
そら
今までさ、私の意見ばっかり
玲於に押し付けてきたからさ!
だから、ちゃんと玲於の意見も聞いて
一緒に分かれたらな…なんて…ね。
そらはそらなりに考えてくれたんだ。


ちょっと…嬉しい。
玲於
ふ ~ ん 、俺の意見聞いてると
自分の意見は通らないって覚えといて?
俺、わがままだから。


直したいとこなんだけど気にならないと


とことん気にならない。


機嫌も絶対悪くなってしまう。
いわゆる、気分屋。
そら
なにその、ドS感。もえる。
玲於
馬鹿じゃねぇ。
そら
私、Mなのかも。
玲於にいじめられたい。


って…爆笑


こいつ、頭いってんじゃね。
玲於
てか、こんな時間に何してたの。
そら
コンビニ行こうって思って出てきたら
あなたが座ってるからさ。
玲於
行こ。
そら
へ?
玲於
コンビニ行くんじゃねぇの?
そら
あぁ!行く!
俺が立つとそらも立つ。


そらの身長は大きくてちょっとドキッとした。


抜かされんじゃねぇかって。
今までに感じたことない心配。


あなたさんはちっさかった…!
また、考えてるし…
そら
早く ~ 、玲於歩くの遅!
玲於
え?あ…
そらが歩く距離と俺の歩く距離は随分と離れていた。
そら
のろくなったね。
玲於
あぁ…
なんでた?


俺、隼からよく歩くの早すぎって


何度も言われたことあって自分でも自覚はあった。
なのに、今考えると今の歩くスピードは


すごく遅いし昔じゃ考えられない。
あなたさんのスピード…か。
そら
先輩のスピードに慣れちゃったのね。
いいよ、そのスピードで。


って俺の横に来た。
玲於
わりっ…
俺、当分今のスピードでしか歩けねぇかも。























そら
ダメだわ、遅すぎる。無駄に疲れる。
しばらくしてそらが我慢の限界に来たのだろう。


飛び跳ねたり急に走ったり…
玲於
わかったわかった。
違和感でしかないスピードで歩いた。
そら
そうそう!このスピードだよ!
求めてたスピードになって喜ぶそら。


お子ちゃま。
玲於
近所迷惑。
そら
あ、やば…
俺に言われて、気づくなんて…笑


そらと普通に話せてる俺がいてびっくり。


今まで異常な拒絶反応を起こしてて


見るだけでも嫌だったのに。


なんだろ…


俺の意見も聞いてくれる。とそらが


言ってくれたおかげでちょっと肩が軽くなった。
そら
やっと着いた ~ 。
コンビニまで何分かかってんの。って


俺に怒ってきた。


仕方ねぇじゃんか ~ 。
コンビニに入るとスゥーっと涼しい風。


居心地が良かった。
玲於
何買うの?
そら
アイス。
玲於
俺も買おっと。
二人でアイスコーナーに行きアイスを選ぶ。
そら
私、これ。
そらが手に取ったのは雪見だいふく。


久しぶりに見た。


そのパッケージ。
玲於
なら、俺ピノ。
まぁ、定番。


ピノ。
そら
1個ちょうだいね。
玲於
いいけど、俺も1個ちょうだいね。
そら
いい…!あ、ダメ!!
私、1個しか食べれないじゃん!
雪見だいふくの大きさに気づいたようで…
玲於
俺のあげたピノがあるじゃん。
それ合わせて2個だろ?
そら
まぁ…そうだけど…
ん ~ !やっぱダメ!譲れない!
ブンブン顔を横に振るそら。
玲於
はいはい。
あの頃みたい。


中学生のあの頃に戻ったよう。
一瞬だけ。


俺の頭にはあなたさんは消えていて
また、歩き出すと


あの手の温もりが蘇ってきて


頭にあなたさんの笑顔が戻ってきた。
この余韻はいつまで続くのか。

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