終わった…
夢の一週間。
短かったような長かったような。
いや、短すぎた。
ため息。
したくなくても出るから。
あ ~ 、これからどうしよ。
俺、頑張れねぇよ。
あなたさん無しじゃ無理。
さっきまで繋いでいた手を見る。
まだ、あなたさんの手の感触があって辛い。
ちっさくて、あったかい。
その体温が俺にも伝わって熱かったのに。
ちょっと冷めた。
でも、これってあなたさん俺の事好きじゃないんだよな。
好きだったらこれからもずっと付き合えるのに。
いつもの公園のベンチに座って
いつの間にか俺は携帯を開いて隼に電話してた。
プルプルプル…
察したような受け答え。
2時間ぐらい時間くれたら語れる。
あなたさんとの出会いから今日まで。
ほぼ、その二つに注ぎ込んでる。
もう、諦める。
あなたさんとは関わらないし見もしない話さない。
それぐらいしないと諦めきれない。
こうやっていつも俺の意見に賛成してくれてよ ~ 。
見直す。
通話終了。
見上げると夏っぽい夜空。
もう、夏なのか。
あなたさんは…夏嫌いって…
いっつも考えてしまうのはあなたさんのこと。
諦めるも何も心にあなたさんがいんだから
ぜってぇ無理じゃん。
ベンチの背もたれに手をかけてもたれる。
急に俺の名前を呼ばれて振り返る。
隣いい? って俺の隣に座る。
聞いても座ってんじゃん。
あ ~ 、あの先輩。
って納得してる。
やけに、そらが素直。
いつもみたいにベタベタしてこないし
俺があなたさんの事話しても怒ったりしない。
聞いてみると
そらはそらなりに考えてくれたんだ。
ちょっと…嬉しい。
俺、わがままだから。
直したいとこなんだけど気にならないと
とことん気にならない。
機嫌も絶対悪くなってしまう。
いわゆる、気分屋。
玲於にいじめられたい。
って…爆笑
こいつ、頭いってんじゃね。
俺が立つとそらも立つ。
そらの身長は大きくてちょっとドキッとした。
抜かされんじゃねぇかって。
今までに感じたことない心配。
あなたさんはちっさかった…!
また、考えてるし…
そらが歩く距離と俺の歩く距離は随分と離れていた。
なんでた?
俺、隼からよく歩くの早すぎって
何度も言われたことあって自分でも自覚はあった。
なのに、今考えると今の歩くスピードは
すごく遅いし昔じゃ考えられない。
あなたさんのスピード…か。
いいよ、そのスピードで。
って俺の横に来た。
俺、当分今のスピードでしか歩けねぇかも。
しばらくしてそらが我慢の限界に来たのだろう。
飛び跳ねたり急に走ったり…
違和感でしかないスピードで歩いた。
求めてたスピードになって喜ぶそら。
お子ちゃま。
俺に言われて、気づくなんて…笑
そらと普通に話せてる俺がいてびっくり。
今まで異常な拒絶反応を起こしてて
見るだけでも嫌だったのに。
なんだろ…
俺の意見も聞いてくれる。とそらが
言ってくれたおかげでちょっと肩が軽くなった。
コンビニまで何分かかってんの。って
俺に怒ってきた。
仕方ねぇじゃんか ~ 。
コンビニに入るとスゥーっと涼しい風。
居心地が良かった。
二人でアイスコーナーに行きアイスを選ぶ。
そらが手に取ったのは雪見だいふく。
久しぶりに見た。
そのパッケージ。
まぁ、定番。
ピノ。
雪見だいふくの大きさに気づいたようで…
ブンブン顔を横に振るそら。
あの頃みたい。
中学生のあの頃に戻ったよう。
一瞬だけ。
俺の頭にはあなたさんは消えていて
また、歩き出すと
あの手の温もりが蘇ってきて
頭にあなたさんの笑顔が戻ってきた。
この余韻はいつまで続くのか。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!