第38話

好きじゃないよ
2,036
2018/12/20 07:51
それから、授業は終わりお昼ご飯。
はな
あなた ~!
売店行こ ~!
あなた

あ、ちょっと寄るところあるんだ。

はな
なら、それからにしよ。
あなた

ごめんね。

行ってらっしゃい!って見送ってくれた。
玲於に渡す


という目的があっての会いに行くのは初めて。


緊張する。
手には袋。


この中にはジャケット。


雨の匂いを消すため、何回もファブリーズしたけど


逆効果になってないかな。
階段を降りて1年生の教室が見えてくる。
よ ~ し、ここまで来たなら渡すべき。


あ、智也くんもいるし。


また、後輩に手出して。
私が来るのに気づいた智也くんは手を振った。
吉田智也
あれ?どうしたの?
あなた

ちょっと…ね笑

嬉しかった。


多分、顔は緩んでいるだろう。
吉田智也
なになに、気になるから着いてく ~ 。
私の後ろをノコノコ着いてくる智也くん。


かわいい ~ 。


なんて愉快な気持ちになっていたのもつかの間。
玲於の後ろ姿が見えて話しかけようとした時。
そら
玲於 ~ !待ってって言ったじゃん!
玲於
聞いてねぇし。
足が止まった。


あの子は…?


あ…前 彼女です!って言ってた子か…


でも、玲於は付き合ってないって言ってた。
吉田智也
あなたちゃん、大丈夫?
玲於に会いに来たという理由が明らかになった。
あなた

ううん?何が…?大丈夫だよ?

無理して笑う。


やだなぁ。


馬鹿だ。


今頃、あの子に嫉妬してるんだ。
二人がベタベタしている間に私は足を進めた。
あなた

玲於。

私の声に反応して後ろを振り向く。


私の心臓はバクバク。
玲於
あ!そうでしたね。
ありがとうございます。
あなた

こちらこそありがとう。

紙袋を渡すとちょっとだけ触れた手。


その時に、もっと高鳴るのが分かって


顔が赤くなっていくのが体温でわかる。
あなた

…じゃっ…

素っ気ない態度で玲於に当たった。


どう思われただろう。


感じ悪、なんて思われただろう。
そら
あのっ…!
あなた

はい?

そらちゃん?に話しかけられた。


私の後ろにいた智也くんも振り向く。
そら
先輩は、玲於の事好きなんですか?
ドキンと…心臓ははねた。


今まで以上にないくらいぐらい大きく。
あなた

え?

そら
だって、玲於可哀想なんです。
毎日、毎日先輩のこと思ってます。
けどそれはもう無駄なんですよね。
玲於がそらちゃんの言うことにとめる。


けど、そらちゃんは止まらない。
そら
私は、玲於が好きです。
好きだから…苦しい思いはして欲しくない。
素直だ。


ちゃんと思いを伝えたんだ。
私は、頷くことしか出来なかった。


玲於の事好きだよ。


ちゃんと恋愛として。
けど…今の私には すき と言える自信がなかった。


そらちゃんの圧に負けて

























あなた

好きじゃないよ。


































目から零れる涙を薄々感じながらそう言った。
そら
なら、私が幸せにしていいですか?
嫌だ。


幸せにするのは…私なのに。
何故か、私は強がってしまう。


したいならすれば


って強がる。


泣いても無駄なのに涙は止まらない。
あなた

頑張ってね。

何が頑張ってだよ。


意味わかんない。


私、ホントの馬鹿かもしれない。
そら
はいっ!
ニコニコして笑うそらちゃん。
玲於と目が合った。


好きだよ。


そう伝えられなかった。


チャンスだったかもしれないのに。


もう一度、敬語なしの関係に戻れると思ったのに。
玲於は、私と目が合うと寂しげに逸らした。


もう、戻れない─────────


そう確信した。
そら
でわっ!
玲於の手を引っ張っていくそらちゃん。


玲於は何か言いたげな顔。


苦しい。


苦しすぎる。


なんで、自分の思いが伝えられないんだろう。


伝えることが出来たなら楽なのに。
声が出せない状況で喉が痛い。


大声で泣きたい。


泣き叫びたい。
その場に立ち尽くしたままいた。
吉田智也
ちょっと、あなたちゃん…きて…
私の手を引っ張っていく智也くん。


私を握る手はいつもより強く痛い。


何処に連れてかれるんだろ…


智也くんの後ろ姿をぼんやりと見つめながら


着いてくまま。
来たのは、屋上。
バンとドアが開いて二人で屋上に出た。
吉田智也
ねぇ…なんで…
あなた

え…?

吉田智也
なんで好きって伝えないの。
あなた

…それは…

吉田智也
言うチャンスだったよ!絶対。
あなた

…そうだよね…分かってた…けどっ…



伝えることが怖かった。


LINEで言われたみたいに



" それは無理です "



って言われるんじゃないかって…
吉田智也
なんで泣くの…
あなた

ごめんっ…泣くつもりなんか。

私を智也くんは包んだ。
吉田智也
ねぇ、泣くとかありえないから。
あなた

ごめん…

吉田智也
なんであんな後輩のために
あなたちゃんが泣かなきゃいけねぇの。
あなた

え…、

一瞬、涙が止まった。


呆然とした時、智也くんが私から離れた。
吉田智也
泣かないでよ。
あなた

私だって…泣きたくないよ…

吉田智也
俺だったら絶対泣かせないのに。
誰も悲しまないよ?
あなた

どういうこと…?

吉田智也
前も言ったけど俺、あなたちゃんが好きだよ。
智也くんが私の目を見てそう言った。


ほら、やっぱり気持ちを伝えれるんだ。
吉田智也
俺にしなよ。
智也くんの優しさはよく分かった。


人の気持ちによく気づける。
あなた

…それはっ

吉田智也
いいっ!まだいいから!
あなた

え?

吉田智也
まだ、振らないで?
あなた

あ、うん…

吉田智也
前言ったみたいに仲良い友達から!
あなた

そうだね。

こうなっているってことは私はまだ玲於を諦めてない。


って言うことになるよね。


もう、無理だって目に見えてるのに。


諦めきれない私がいるんだ。


それから、10分智也くんと座って話した。


けど、私はちょっと泣けてきちゃってまた、ボロボロ。
吉田智也
どう?
あなた

うん、大丈夫、ありがと。

涙もやっと乾いた。


けど、目は腫れてる…
あなた

あ!!!!はな!!

そうだ、はなと売店…!!


忘れてた!!


行かないと!
あなた

ごめん、売店行かなきゃ。
はなと約束してるんだ。

私は猛ダッシュではなの所へ走った。


今までにないぐらい真剣に。
教室に入るとはなが外を眺めて待ってる…


ほんと…やばい…


怒ってるよね…
あなた

はな…?

申し訳ない気持ちでいっぱい。
あなた

ごめんっ…忘れてたつもりは無いんだけど…

これも、言い訳になっちゃう。
あなた

ごめんね…

はな
違うの。
外を見て私の顔は見ない。


本気で怒ってる…
あなた

え?

はな
なんで泣いてるの。
なんで、私の顔を見ないで泣いていたってことが分かるの…
あなた

え…?

そっと、私の方を見たはな。
はな
ねぇ、なんで泣いてるの。
はなまで泣きそうな声で私に言った。


その時、私も涙腺が崩壊してしまい崩れた。
あなた

…苦しいっ…苦しいの…

よしよし…


って私の背中をさするはな。


なんでいつもいつも分かってくれるんだろう。


私の思っていることを全部言ってくれて


楽にさせてくれる。


はなは唯一無二の存在。
はな
何があったかは後でいいから。
とりあえず泣いてスッキリして?
あなた

…う"ん"っ!

はな
な ~ に、その声!笑
つい泣きすぎておかしくなった声を笑う。


こういうところだよなぁ。


はなの愛されるところ。


ちゃんとしなきゃ…


はなに助けてもらわなくても大丈夫なように。


私も、強くならなきゃ。


自分の壁にぶつからないと。


逃げちゃダメ。


立ち向かうの。
あなた

はな、ありがと!

はな
い ~ え!
昼食の時間はちょっと減ったけど


それから、はなに私の思いを打ち明けた。
















「 玲於のこと好きみたい 」



























はなは優しく頷いてくれた。

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