それから、授業は終わりお昼ご飯。
行ってらっしゃい!って見送ってくれた。
玲於に渡す
という目的があっての会いに行くのは初めて。
緊張する。
手には袋。
この中にはジャケット。
雨の匂いを消すため、何回もファブリーズしたけど
逆効果になってないかな。
階段を降りて1年生の教室が見えてくる。
よ ~ し、ここまで来たなら渡すべき。
あ、智也くんもいるし。
また、後輩に手出して。
私が来るのに気づいた智也くんは手を振った。
嬉しかった。
多分、顔は緩んでいるだろう。
私の後ろをノコノコ着いてくる智也くん。
かわいい ~ 。
なんて愉快な気持ちになっていたのもつかの間。
玲於の後ろ姿が見えて話しかけようとした時。
足が止まった。
あの子は…?
あ…前 彼女です!って言ってた子か…
でも、玲於は付き合ってないって言ってた。
玲於に会いに来たという理由が明らかになった。
無理して笑う。
やだなぁ。
馬鹿だ。
今頃、あの子に嫉妬してるんだ。
二人がベタベタしている間に私は足を進めた。
私の声に反応して後ろを振り向く。
私の心臓はバクバク。
紙袋を渡すとちょっとだけ触れた手。
その時に、もっと高鳴るのが分かって
顔が赤くなっていくのが体温でわかる。
素っ気ない態度で玲於に当たった。
どう思われただろう。
感じ悪、なんて思われただろう。
そらちゃん?に話しかけられた。
私の後ろにいた智也くんも振り向く。
ドキンと…心臓ははねた。
今まで以上にないくらいぐらい大きく。
玲於がそらちゃんの言うことにとめる。
けど、そらちゃんは止まらない。
素直だ。
ちゃんと思いを伝えたんだ。
私は、頷くことしか出来なかった。
玲於の事好きだよ。
ちゃんと恋愛として。
けど…今の私には すき と言える自信がなかった。
そらちゃんの圧に負けて
目から零れる涙を薄々感じながらそう言った。
嫌だ。
幸せにするのは…私なのに。
何故か、私は強がってしまう。
したいならすれば
って強がる。
泣いても無駄なのに涙は止まらない。
何が頑張ってだよ。
意味わかんない。
私、ホントの馬鹿かもしれない。
ニコニコして笑うそらちゃん。
玲於と目が合った。
好きだよ。
そう伝えられなかった。
チャンスだったかもしれないのに。
もう一度、敬語なしの関係に戻れると思ったのに。
玲於は、私と目が合うと寂しげに逸らした。
もう、戻れない─────────
そう確信した。
玲於の手を引っ張っていくそらちゃん。
玲於は何か言いたげな顔。
苦しい。
苦しすぎる。
なんで、自分の思いが伝えられないんだろう。
伝えることが出来たなら楽なのに。
声が出せない状況で喉が痛い。
大声で泣きたい。
泣き叫びたい。
その場に立ち尽くしたままいた。
私の手を引っ張っていく智也くん。
私を握る手はいつもより強く痛い。
何処に連れてかれるんだろ…
智也くんの後ろ姿をぼんやりと見つめながら
着いてくまま。
来たのは、屋上。
バンとドアが開いて二人で屋上に出た。
伝えることが怖かった。
LINEで言われたみたいに
" それは無理です "
って言われるんじゃないかって…
私を智也くんは包んだ。
一瞬、涙が止まった。
呆然とした時、智也くんが私から離れた。
智也くんが私の目を見てそう言った。
ほら、やっぱり気持ちを伝えれるんだ。
智也くんの優しさはよく分かった。
人の気持ちによく気づける。
こうなっているってことは私はまだ玲於を諦めてない。
って言うことになるよね。
もう、無理だって目に見えてるのに。
諦めきれない私がいるんだ。
それから、10分智也くんと座って話した。
けど、私はちょっと泣けてきちゃってまた、ボロボロ。
涙もやっと乾いた。
けど、目は腫れてる…
そうだ、はなと売店…!!
忘れてた!!
行かないと!
私は猛ダッシュではなの所へ走った。
今までにないぐらい真剣に。
教室に入るとはなが外を眺めて待ってる…
ほんと…やばい…
怒ってるよね…
申し訳ない気持ちでいっぱい。
これも、言い訳になっちゃう。
外を見て私の顔は見ない。
本気で怒ってる…
なんで、私の顔を見ないで泣いていたってことが分かるの…
そっと、私の方を見たはな。
はなまで泣きそうな声で私に言った。
その時、私も涙腺が崩壊してしまい崩れた。
よしよし…
って私の背中をさするはな。
なんでいつもいつも分かってくれるんだろう。
私の思っていることを全部言ってくれて
楽にさせてくれる。
はなは唯一無二の存在。
つい泣きすぎておかしくなった声を笑う。
こういうところだよなぁ。
はなの愛されるところ。
ちゃんとしなきゃ…
はなに助けてもらわなくても大丈夫なように。
私も、強くならなきゃ。
自分の壁にぶつからないと。
逃げちゃダメ。
立ち向かうの。
昼食の時間はちょっと減ったけど
それから、はなに私の思いを打ち明けた。
「 玲於のこと好きみたい 」
はなは優しく頷いてくれた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。