第35話

諦める
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2018/12/16 07:33
あの時、俺は伝えるべきだった言葉。


それは


" 話しかけてもいいですか "



その文だった。


無視しても無駄。


逆にダメだと思いそう決心した。
言おうと思った時。
あの先輩。


俺のクラスの女子と付き合っていたからなんとなく


顔はわかった。


その人がなぜ、あなたさんを呼んでいるんだ。
俺がいるべきじゃないと
玲於
…ありがとうございました。
そう一言残し、保健室を後にした。
歩く度に痛む膝。


けど、それとは逆にあなたさんが触った足の部分の


手の感触は何故か消えないまま。
脳にも皮膚にも鮮明に記憶されていた。
あの暖かい手。


細長くて綺麗な指。


折れちゃうんじゃないかってぐらい細くて綺麗。


その手の形は今でも目に焼き付いている。


気持ち悪いのは重々承知。


けど…やっぱ覚えてしまうんだ。


好きな人のことは。
あれから、ずっとあなたさんのことは


考えないようにしていた。


けど、そう意識する度に逆に思い出してしまい


忘れるところか忘れられなくなっていた。
気づけば授業にも出ず、屋上に来ていた。
照りつける太陽は容赦なく俺に突き刺さる。


暑いの意外といけるなんて思っていたのに


無理だわ。


暑い。
陽の当たらない陰に来て座った。
スースーと通り抜ける風が居心地がいい。
玲於
もう、だるい。
こんなこと考えたくない。


自分で自分を追い込んでこ落ち込んでるだけ。
床に寝転んで空を見上げる。


青いなぁ。


大きい。


俺の悩みなんてちっぽけな悩み。
そら
な ~ に、サボってんの。
急なそらの登場で驚いた。
玲於
わっ!!なんだよ、お前!
そら
なに、私だけど。
玲於
そりゃ、見たらわかる
そら
なに?授業サボった?
玲於
まぁ…
そら
また、悩んでんの?
玲於
お前には関係ないから…
今は、誰にも俺の悩みを聞いて欲しいなんて思ってない。


そっとしておいて欲しい。
そら
先輩かぁ…
玲於
は!?
そら
動揺しちゃって。
ニヤニヤするそら。


はぁ、うぜぇ笑
玲於
別に…
そら
諦めるんじゃないの?
玲於
うるさい。
寝返りを打ってそらの顔が見えないようにした。


それ以上、俺に入ってくんな。


なのに、そらは
そら
私で良かったら話聞くのに!
玲於
いい。
そら
なんで?
そう言って、俺の寝返りを打った前に来た。


ぴょんって。


…お前、スカートは気にしないのか。
見えてしまいそうで怖かった。


上を向き直して空を見た。
玲於
俺一人でいい。
そら
え ~ 、面白くない。
玲於
面白いとかじゃねぇよ。
そら
まぁ、いい。
玲於が話したいと思った時に話してね。
玲於
そんな日…来ねぇよ…
そら
待ってるから。
俺の横で両足を畳んで、両手で包んでいる。
こいつ、人並み以上に可愛いと思うのに


俺ばっかに構って…
玲於
…なんで俺なの。
そら
やっと話す気になった?
玲於
違ぇ、なんで俺ばっかに構うの。
そら
そんなの、好きだからに決まってんじゃん。
急にどストレートな言葉を言い放つそら。


ビックリして、ドキドキしてしまう。
そら
好きじゃなかったらこんなめんどくさい
男に構ってなんかないよ!
玲於
悪かったなぁ、めんどくさい男で。
そら
けど、そういうめんどくさい所も
好きなんだよなぁ。
独り言のように呟いたそら。


透き通るような肌の白さ、切れた鼻筋。


横顔美人ってこういうことか。
そら
私は、玲於みたいにうじうじしないし。
好きなら好きって言うからね。
玲於
あぁ…
そら
好きだよ、玲於。
そう俺を覗き込むように笑顔で言うそらの顔は


今まで以上に可愛く見えて俺の心臓を動かした。
このままだと、なんかやばい気がして
玲於
…ほら、行くよ。
座り込むそらを起き上がらせるため、手を貸す。
そら
も ~ 、自分勝手だなぁ。
そう言いつつも、俺の手を握って立ち上がる。
玲於
嫌なら構ってくんな。
屋上のドアノブを握った時。
そら
好きだから構うよ。
背中がカァっと熱が上がった気がした。
玲於
お前…どストレート、馬鹿。
今の俺にはハードルは高いし…


馴れない言葉をずっと投げかけられて


心もズタズタ。


早く、抜け出したい。


抜け出して顔を冷ましたい。


てか、俺…めっちゃあいつにドキドキさせられてんの。


まじ、だせぇ…
ぴょんって俺の横に飛んできたそら。


話を振ってくるけど何故か返せないまま。


廊下を歩いていたらチャイムがなって1時間目が終了した。
そら
私、次国語だよ。
玲於
ふ ~ ん…
国語…


俺の担任。


この前、あなたさんノート運びに来たよなぁ。


そん時も、あの先輩と一緒だった…


もしや…付き合ってんのか。


そう考えた時。


背中はカァっと冷えた。


さっきとは違う。
玲於
俺…英語。
そら
私、英語苦手 ~ !
玲於
俺も…
そうえば、あなたさんは得意だったような。
そら
先輩は得意だった?
玲於
うん…数学は嫌いだった。
そら
そっか。
そらが聞いてないことも話していた。


やべぇ、めっちゃ覚えてるし…


図書館で勉強した時に撮った写真


まだ、フォルダに入っている。


消さなきゃなぁ


なんて、思ってるけどなかなか消せない。


強いていえばカバンのキーホルダーも外したい。


てか、最初は俺がつけてたんだから


外す必要はないんだけど…
そら
あ、先輩…
そらの言葉と共に前を見るとあなたさんと…
あの男。
そら
あの人、彼氏なんじゃないの?
玲於
知らね。
そら
イケメンだなぁ。
確かにイケメン。


あなたさんとも横で並んでいて釣り合ってる。


身長差もちょうどいい。


俺となんか並んじゃ恥ずかしい。


はぁ…見た目からあの先輩に負けてんだ。
そら
けど、玲於の方がカッコイイ。
ほら、行こ。


って俺の手を握るそらに、着いて教室に戻る。
そらに助けられてばっかだ…

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