玲於から貰ったクッションを袋に入れて持ち歩く。
プラネタリウムの場所に行くまでは歩き。
意外と近かったらしく今までどうして気づかなかったのか
疑問を抱くばかりだった。
玲於の指さす方向には大きな建物。
その上についている文字に
" 宇宙星空科学博物館 "
と、書かれてあった。
想像を遥かに超える大きさでびっくり。
人も意外といると思ったらすいていてびっくり。
びっくりが立て続きに起こるってちょっと不思議。
さっきよりも強くなった手。
カウンターに行きお金を払って入場。
また、玲於に買わせちゃった…
こう見えて私、年上なんだから。
しっかりしなきゃね。
私の胸が高鳴る。
彼氏らしいこと…
私の片手にはプラネタリウムの入場券。
3時から4時半
という時刻が記載されていてちょっとワクワク。
それにしても人が少ない。
いても、小さい子連れの家族とか
おじいちゃんおばあちゃんが仲良く星を学んだりしてる。
幅広い世代から愛されてるんだと思う。
星って…いいよね。
心が綺麗になりそう。
いつか、見てみたい。
寒い夜。
山に車で行って寝転んで空を見上げる。
満天の星空が輝いているのが目に浮かぶ。
7.14生まれ。
かに座。
何笑ってんの。って言われる。
なんか…玲於がやぎ座ってちょっとかわいい。
自分でも不思議に思う。
なんで夏生まれなのに嫌いなんだろって。
もしも、私が冬に生まれてたら?
夏が好きだったかもしれないし
今と同様、冬が嫌いだったかもしれない。
人生っておもしろい。
でも、そんな感じするな。
決して、夏って感じはしない。
もうそろそろ、時間になって10分前に入場する。
プラネタリウムってのは映画館のようなのか。
テレビで見たのと一緒で席が倒れるのか。
眠くなるのかな。
誰もまだいなくて私と玲於の貸切状態。
今日2度目の玲於の驚く顔。
私の思い描いてた光景と似てるな。
" 寝転んで空を見上げる "
嬉しいな。
ベストスポットらしい真ん中の席に来た。
席に着くとなんか緊張。
初だもん。
何が起こるかわかんない。
カバンたちを全て下に置いてふうっと息を吐く。
私の目を見て言う玲於。
なんて言えばいいかわかんない…
一週間だけで私は意外と玲於にハマってるよ。
楽しいし
居て、安心するから。
誰も居ないこの会場で私と玲於の声だけが響く。
時間っていうものは楽しいほど早く過ぎるのが定番。
なんでだ。
心の心理なのかもしれない。
時間が早くすぎるっていうのが人間の本能で
その事に熱中すると時間の事なんて忘れちゃうくらい
たのしくて、幸せ。
そんな感情だからこそ芽生える感覚で
決して嫌な事ではないし悪い事でもない。
そんな人間の感覚と向き合っていかなきゃならない。
その楽しい時間をどのように使うかがメインじゃないかな。
今…この瞬間。
玲於の横顔。
カッコイイ。
うん、かっこいいよ。
耳の裏、背中から蒸気が出るような感覚がした。
そう微笑んだ玲於。
" 只今から、夏の星の世界 を皆さんと一緒に巡ります "
そのようなアナウンスが流れ暗くなる証明。
その時、私の手に暖かい…
そして、いつも繋ぎなれた玲於の手。
暗くてよく見えない玲於の顔は
大人っぽく見えてドキドキした。
ギュッと強まる手。
それに私もギュッとした。
" 皆さん、星というものは何か知ってますか? "
" 星はある人と人の感情や思いが現れてるものです "
感情…
思い…
星って何気なく光ってるものじゃない。
" 例えば好きな人への気持ちだったりとか ── "
" けど、その恋はどのように行くかは誰にも分かりません "
" その人の行動次第で変わってくる運命なのです。"
アナウンスの人天才か。
私達の状況をまるで読んでいるかのような説明。
ぼそっと呟いた玲於。
何故か、虚しくなる。
その途端、玲於と出会ったあの入学式を思い出す。
生意気そうな口調と目付き。
初めはすごい最悪な印象で絶対関わらないと思ってたのに
玲於が名前を聞いてきて知り合いになってしまった…
しつこい。
やだ。
そんな感情しか持ってなかったのに
どんどん玲於といると楽しくて仕方なかった。
授業中、たまにLINEしてくる玲於。
その時の顔が頭に浮かんだりしておもしろかった。
あのいたずらな顔。
放課後は必ずデートと呼ばれるものをした。
初めはぎこちなくて帰りたかった。
手も最初は恥ずかしくって緊張し過ぎてたけど
今では繋がないとどこか居心地が悪い。
取ってくれたぬいぐるみは大切なもの。
玲於は嫌がってたけど
私の意見を聞いてくれて図書館で勉強したことも。
玲於の好きなブランド物のキーホルダー、
お揃いで買ってくれたこと。
そらちゃんって子のことを大切に思ってること。
たくさんたくさん見つかった。
玲於の優しさ。
楽しかった
それと
どこか寂しい。
そのふたつの思いが混じった涙が零れた。
涙を拭こうとすると玲於が親指で拭いてくれた。
プリクラを思い出した。
涙を目にしまって今のこの瞬間を噛み締める。
" これでプラネタリウムを終了致します "
1時間半のプラネタリウムが終わった。
ほんとに1時間半も?
って疑う。
荷物を持って玲於の後ろを歩く。
すると、前から手が伸びてきて
上下にトントンって振って来てる。
あ、手繋ぎたいのかな。笑
かわいい
玲於の手に私の手を乗せると勢いよくギュッと
繋がって、玲於の横に来た。
いつもより近い距離。
玲於の腕と私の腕がくっついてる。
初心に戻った気持ち。
緊張。
ドキドキ。
私の家に送っていくまでずっと話した。
途切れることなくずっと。
隼くんとの馴れ初めを話してる。
隼くんといる時が1番素直になれるらしい。
あ、あの二人付き合ったかな。
最近会ってないから全然わかんないな。
長く歩いた道はいつもと同じ通りなのに
もう、着いてしまった。
急に玲於が叫んだ。
また、話にこればいいよ。
そう言おうと口を開いた時。
玲於が私の前に立つ。
いいよ。
あの時みたいにもう、拒まない。
玲於なら…
そんな感じに思った。
私の、ファーストは…
玲於の顔が近づく…
そして…
重なる。
あれ…?
来ない…
顔を真っ赤にして私に言った。
そっか…
残念。
白い歯をニコッと見せて目を細めた。
私の好きな笑顔。
好きな…
玲於はいつもと違うように私がドアに入る前に
歩いていってしまった。
最後は見送ってくれないんだ。
最後なのに…
名残惜しい思いでドアを開け、入った。
一週間 終了。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。