二人に昨日の出来事を話せばこの通り。
まぁ、だいたい想像は出来てたけど…
たしかに。
亜嵐の言う通り。
私は、なんで玲於と付き合ったんだ?
あまり初対面や中が深くない人には
表を出さないタイプなの。
玲於…だから?
玲於だから、まぁいいか って…?
も ~ 、訳わかんない。
その時の流れってほんと怖い。
はなは顎の下に手を添えて考え出す。
中務先生が入ってきた。
その途端、みんな席に座り出す。
でも、片寄先生とは違う…笑
目をハートにしていた女子達は面倒くさそうな
顔をして席に座って話し出す。
なんか…変わった?先生。
けど、私にはもっと気にしなきゃいけないことがある。
私の筆箱からそっと出す1枚の手紙。
その紙の差出人は " カレ " ただ一人。
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あなたさん、今日放課後デートしましょ。
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こりゃ、本気だ。
まだ、返事はしてない。
朝来たら下駄箱に入っていたから。
見られそうになるのが怖くて瞬間的に
玲於からの手紙を握り締めてしまった。
吉田くんって…名前なんだっけ…
って微笑む。
確かに。
私、ずっとはなと亜嵐といたからクラスの子と
全然馴染めてなかったな。
突然、私の名前を呼ばれた。
知ってるんだ…
ニヤニヤしながら私に言ってくる。
吉田くんは意外と良い奴なのかもしれない。
それからお互いのことを話したりして
意外と会話は弾んだ。
吉田智也。
サッカー部
2日前まど彼女いたけど振られたらしい。
んで…
思わず立ってしまって
中務先生にしばかれる…!
そんな思いでいたら吉田くんはクスクス笑ってる!
有り得ない!!
そう小声で言っても気づいてないの…?
クスクスと肩で笑う笑い方は辞めない。
肩…
たしか、玲於も肩で笑ってたような。
ようやく座れた。
はなと亜嵐からの視線は痛いがまずはコチラ。
机に伏せ顔だけこっちを向いて笑っている。
何故か、キュンとしてしまった。
これってありなのかな…
私、付き合ってるんだけど。
それはあっちの一方的な恋を押し付けられてる…
って言っちゃ悪いけどそう思える。
だから、私の思いもちゃんと…
中務先生の声でハッとした。
もう、HRは終わっていた。
と言って廊下に出て行ってしまった。
今日できた " 彼女 " に会いに行くんだろう。
吉田くんを見送った時。
机をばん!と叩く音。
ふ ~ ん って人を疑うような目をして私を細目で見る。
最近の亜嵐はちょっとおかしい。
私のする行動にやたらと文句が多い。
玲於と付き合ったって言った時もそう。
どうして?
どっちが?
なんで?
と。
? ばっかり。
そんな風には見えなかったけど…
その時。
廊下がザワザワしだした。
廊下と教室を繋ぐ窓を通じて覗いた。
そこにはあの…人。
はなの後ろから覗いた亜嵐。
1人の友達を横に歩いてる玲於。
その後ろにはズラズラと女子。
1年生に関わらず、2年生…3年生も。
すっげ。
移動教室なのかな。
ま、私には…
席に戻ろうとすると
そう私の名前を呼ぶ元気な声。
最近聞き慣れてきた声。
窓から覗いたと思いきやニコって目を細めて笑う。
周りはギャーギャー騒いでいる。
けど、私の心臓はバクバク音を立てて動く。
急に…やめてよ
はい!ってまた目を細めて笑う。
今日は機嫌がいいのかいつもは
塩のようにしょっぱくて冷めてるのに
今日は甘く砂糖のよう。
すっかり忘れていた。
その紙…今ポケットでくしゃくしゃに…
あ ~ あ ~ 。
やばい、ほんとに流れって怖い。
玲於とその友達はもう行ってしまったけど
私にはまだ…
ほらほら。
また。
あ、亜嵐は私のこと心配してるのか。
そういうことか!
だから、ずっと私に聞いてくるんだ。
やっと理解した。
そう優しく微笑んだはなの顔。
その顔はどうしてもいつもの顔には見えなかった…
チャイムが鳴って廊下にいた他学年達も帰っていく。
ブレザーのポケットに入れた玲於からの手紙を出す。
小さく丸まっていてしわしわ…
それを伸ばすように丁寧に丁寧に広げる。
すると滲み出てくる玲於の文字。
今日2度目のため息。
私は次の授業の準備と思い教科書を出して待っていた。
てか、吉田くん遅すぎじゃないかな。
そう時計を見ながら思った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!