第42話

叶わない恋
2,376
2018/12/23 16:19


" 佐野玲於 "



ただ、一人。
ヘッドホンを見身につけながら爆睡している。


もしや、寝過ごした…?


だって、こっち方面じゃないと思うし…
相当なお疲れモードなのガヤガヤとした


この環境でもなかなか起きない。
あなた

どうしよ…

起こすべきなのかな…


寝過ごしてるの気づかせてあげなきゃ…


でも、寝過ごしじゃなかったら?


ただ、寝てるだけとか。


あ ~ もう!


わかんない。


はなに聞こ!


携帯を取り出してはなの連絡先をタップしようとした時。


指が画面に触れず、止まる。
もう、自分で考えなきゃ…ね。
よしっ!起こそう!
けど、寝顔可愛い…


周りの女子もコソコソ言ってるもん。


かっこいい とか かわいい とか。


嫌だ嫌だ嫌だ。


私だけが見たい。この寝顔。


フォルダに収めておきたい。


うずうずしてしまい、1枚遠くからパシャリ。
あなた

わ…盗撮じゃん…

しっかり残っている玲於の寝顔写真を見てると


つい、頬が緩んでしまう。
起こさなきゃっ。
玲於に近寄って肩をとんとんした。
あなた

玲於っ…!玲於っ…!

起きる気配もなく、困った。
あなた

玲於。起きて。

すると、ムクっと機嫌悪そうに起きた玲於。


あまり視界が見えていないのか目が半開き。
玲於
だれ。
あなた

あなたですけど。

玲於
あ ~ 、あなたさん?
なんだ…そっか…!?
目がつむりそうになった時


パチッと目が開き私を凝視。
玲於
な、なんであなたさん!?
あなた

私はこの辺で友達と…

玲於
なるほど…
あなた

玲於は何してるの?

玲於
…ん?俺何してるんだろ…
やはり、寝過ごしたか。
玲於
やっちまったかもです。
寝ちまったぁ。


って頭をクシャクシャとする。
あなた

大丈夫?

玲於
何がっすか?
その時。


目が会った瞬間、電車が大きく揺れ動き


その反動で目の前にいる玲於に──────────


" 触れた "

あなた

っ…!?

玲於
っ!?
周りは幸いに携帯に目がいっていて


私達のこの行動には誰も目に止まってないはず…
あなた

ご、ごめん!!

体制を整えて謝った。


最悪だ。


まじで、人生終わった。
玲於
いえ…大丈夫です…
明らかに落ち込む態度。


こりゃ…嫌われた。
あなた

じ、じゃ…私あっち行く。

人の間をスルッと抜けて端にやってきた。


玲於の周りには高校生が多かったけど


こっちには中年男性が多い。


いわゆる、大人。


ちょっとは考えていたもの。


さっきの頭にはそんなこと1ミリもなかった。
ちょっと気持ち悪い。


後ろを向いて横をチラッと覗くと


頬を赤く染めた玲於。


ヘッドホンをまたつけ直して聞いていた。
その時。


お尻に何かが触れるような感触。
振り返ってみるもそれらしき人はいない。
元の体制に戻り、窓の外を見てると


明らかに触られた。


気持ち悪い。
あなた

はぁっ…はあっ…

おじさん無理。


心拍数が上がって呼吸も荒くなる。
誰か…


助けて…


そう願った。














止まった…


























玲於
何してんすか。























振り向くと玲於が立っていて…
あなた

れっ…玲於…

つい、涙が溢れる。
そのおじさんは逃げて行った。
あなた

ありがとう…玲於。

玲於
いえ、当たり前なんで。
頭を下げて手すりに捕まろうとしたら


玲於が私を引っ張って座席に座らせた。
あなた

え?

玲於
危ないでしょ。
その一言だけ残して私を座らせた。


上から玲於が見下ろされる状態。


あぁ、たまらん。


かっこいい。
玲於
顔赤いですよ?大丈夫?
あなた

全然。

あんたのせいだよ。


かっこいいから。
それから、ちょっとして私の降りる駅。
あなた

じゃ、ここだから。

玲於
なら、俺も。
と、一緒に着いてきて降りた。
あなた

玲於ここなの?

玲於
あなたさん送って帰る。
その方が道わかりやすいし。
あなた

なるほど…

別に来なくていいよ とか ありがとう


って言えば


私のためじゃなく玲於の帰りが楽って意味かもしれない。
あ ~ ダメだな。


私って。


ほんと、こういうことを考えるの向いてない。
.
あなた

ありがと、送ってくれて。

玲於
いえ、大丈夫です。
すごく楽しかったです。
ありがとうございました。
敬語は嫌いだ。


私の嫌いなものトップ3のNO.1に属す。


けど、なんだろ。


すごく楽しかったです。


そうかな…笑


って言っちゃ悪いけど私は前の会話の方が楽しかった。
あなた

気をつけてね。

ペコッと頭を下げれば元の速さであろう


玲於の歩くスピードで帰って行った。
帰ってくる時も話せたけど前みたいに


冗談言い合ったり、服の話したり


私に対する惚気話を聞かされたりして照れた。


けど、今は違う。


勉強のこと。


家庭のこと。


別に知って得しないことばっか。


私は玲於のことを知りたいのに。
玄関に入るとさっきまでの思いがだんだんこみ上げてきて
あなた

会いたいっ…

大粒の涙を零した。
お母さんから


「何があったの!?」


と、すごく不思議がられたが伝えないまま2階に。
私玲於が大好きだよ。


嫌いなんかじゃない。


あなたがいないと生きていけないもん。


「はな、今日ね玲於と帰り帰ってきたの。」


そうLINEで送ったら


はな「ねぇ、あなた。聞いた?佐野くんのこと。」


玲於のこと…?


「なに?」



























はな「佐野くん、転校するんだって。」




















私の頭の歯車は一瞬にして止まった。


転校…?


その意味がわからなかった。


なにそれ。


え、冗談なら面白くして欲しい…


「え、どういうこと?嘘やめてよ?」


はな「嘘じゃない。小森くんが言ってた。」


「聞いてないよ。」


はな「東京に行っちゃうんだって。」


親の都合らしいが…私には


携帯の文字も涙で滲んで見えない。


転校するなら…するって言ってよ。


だから、さっきの言葉


" すごく楽しかったです "


って今までの思い出について言われるかのように


行ってきた訳…?


やだ…


行かないで。


玲於なしじゃダメなんだよ。


告白もしてないもん。


気持ち伝えれてないよ。


ダメだよ。


このままじゃ。
私の思いはすぐ行動に移し、靴を履いて外に飛び出した。
玲於…


待って。


ちゃんと思い伝えるよ。


好きだって。


待たせてごめんね?


ってね。


そしたらどんな反応するかな。


嫌がるかな。


嬉しがってくれるのかな。


必死に足を動かして走る。


まだ、帰ってないといいけど。
あなた

はぁ、はぁ…

呼吸を整えてこの交差点の真ん中から周りを見渡した。
一つ目に入ったのは公園。


よく、小さい頃遊んでたな。


私の家の近くだから。
足を踏み入れる。


まさか、玲於いないよね。


なんて思ったらいたんだよ。
あなた

ねぇ!玲於!!

駆け寄った。
玲於
あなたさん。
あなた

天候とか聞いてないっ。

玲於
ごめんなさい。
あなた

…だ。

玲於
え?
あなた

行かないで。玲於。

玲於
あなたさん?
大丈夫。


ちゃんと言える。
あなた

私、玲於が好きなの!

夜の公園響き渡る私の声。
え?


と、戸惑った顔はちょっと嬉しそうにしてくれるのは


私の心を揺らすのだが。
玲於
ごめん…気持ちには応えられません。
頭を深く下げて玲於は公園を出ていった。


実らなかったよ。私の恋。


叶わない恋だった。


初めからわかってた。


これで、良かったんだ。



















それから、玲於の姿を見る人は誰一人いなかった。

プリ小説オーディオドラマ