新川 あなた。
高校2年生の春。
私は一年着慣らした制服を引き締め学校に向かう。
学校に行く道はいつもと変わらない景色なのに
何故か今日の景色は違うように見える。
近くのパン屋。
そこから匂うパンの香りは誰もがそこを通る度に
幸せそうな顔をして通る。
それを、一年の間に私は見つけた。
私の登校と一緒に小学生も大きなランドセルを背負って
横断歩道を渡っている姿も今では当たり前の光景。
そんなことを呟いて校門をくぐる。
昇降口には沢山の人集り。
ここの昇降口は1から3年生まで一緒だ。
だから、朝のこの場所はいろいろな匂いになる。
ドアを張り出されているクラス表を見ようとしても
人がいてなかなか見えない。
身長、154cm。
周りにはそれを遥かに超える身長の人たち。
つま先を立てて見ようとしても無駄。
も ~ !
見えないし!
つま先をグイッとあげた時。
バランスを崩して前に倒れた。
誰かの肩につかまった。
前を見るとすごい目付きで私を睨む人。
誰だろ…
見たことの無い顔。
1年生かな。
んじゃ。ってどっか行ってしまった。
え?
あれ、後輩なの。
ちょっと…新学期からついてない…
ちょっと気持ちを落としていた時。
遠くから私を呼ぶ声。
はな だ。
私の親友。
と言って抱き合う私達。
はな とは一年の時に仲良くなった。
もう、昔からの仲のような関係。
可愛くてちょっと天然が混じっているはなは
少し、大変だけど一緒にいて楽しい。
私達は1年生を見て 新品だ… って話した。
私もあんなんだったのかな。
一年前がつい最近のように感じる。
教室に入るともうグループが出来ていてうるさい。
男子もまあまあ良くて2年生のクラスはついてる。
ほら、かわいい。
もう私の癒しなの、この子。
亜嵐が好きでずっと片思いしている。
ほらってはなの背中を押した。
手でガッツポーズを作って亜嵐の元へ。
上手く話しかけれたみたいで
亜嵐の顔もはなの顔もにこやかになった。
私は黒板に張り出されている座席表を見て席に着く。
小学校からずっとそう。
私の苗字は 「あ」 だから絶対1番か2番。
必ず先生の前だから最初はすごい真面目。
はなは 山崎 だから後ろの方。
絶対近くにはならない。
亜嵐は 白濱 で、丁度私の隣。
朝から人混みに飲まれて疲れたのかため息。
あ…
てか、なんなのあの後輩。
あの目付き…
印象悪すぎだろっ!
うんうん って頷いた。
後ろには亜嵐とはなが立っていた。
周りの机に座って大きな目で私を見る。
どういうこと ~ ?って私を覗き込む。
あんたらお似合いカップルかよ。
付き合ったなら
美男美女で私はこのカップルを推すけど…
はなさん?
貴方は亜嵐一筋なのでは?
ちょっとちょっと、その二人で話を進めないで。
私、そんな幼く見えるの?
もうちょっと大人にならないと。
まぁ、多分もう関わることは無いし。
この学校は凄い人数の生徒いるし。
顔も合わせることは無いと思うから。
いいんだけど…
私の担任が教室に入ってきた。
関西弁の赤髪の先生。
ここの学校は先生も緩いのか。
1年間いるけど赤髪の先生は見たことないな。
中務裕太先生だって。
亜嵐が ぶふぉっ!と凄い勢いで笑うと
クラス中が笑いに包まれた。
きゃ ~ って。
亜嵐は凄いな。
一気に静かになっていたあのクラスを
笑いに包まれるようになったんだから。
そんな思いで亜嵐を見ていたら
あぁ、なんか楽しくなりそう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。