あぁ、ヤッパリや。わかっとったけど、やっぱきついし悔しいわ。
センター俺やったのに
タオルで涙をぬぐいながら。でも、悔しくなれて良かった。でも前の悔しさと別の悔しさがある気いする。なんなんやこの気持ち。ひかりと海斗が心配そうに見てるのにも気付いた。でもなんか落ち着かん。
練習室を出てもあちこちに練習生がいる。視界の片隅にセンター奪還して嬉しそうに秀太に報告する潤くんの姿を見てしまった。
あぁ、ヤバイ。涙が込み上げる。
秀太の横は俺やったのに。
タオルで顔を隠しながら出きるだけ人の少ない場所。カメラのない場所。なんでこういうとき見つからんかな。
もう、感情がめちゃくちゃや。センター奪われて悔しいん?秀太の隣居れなくて寂しいん?あぁ、俺ほんまダサいわ。
やっと見つけた人気のない場所には文哉がいた。いや、待ってたようやった。
そういわれて振り返ると心配そうな顔で秀太が走ってきた。
名前を言われるだけで、ちくっと胸が痛む。俺ほんまダサいわ。これから先に落ちんのに。
3人でしょうもないこといって笑って、あ、俺の居場所は間違いなくここにあるって思った。フワッとした不安もなんか溶けて、結果がどうなってもまた4人に戻れる気ぃした。
そういえば、前の俺は上手くやらなきゃ、失敗するわけにはいかんって思ってたけど、変わったんよな。
みんなとやりたいから上手くなりたい。
楽しいから頑張れる。
失敗しても笑い話にして、またそこから登っていける。
そんな場所が嬉しくて居心地が良かった。
そうや、俺たちは絶対繋がっている。俺もそれを信じようと思えた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!