半分飲んで、氷が溶けて薄くなったメロンソーダを飲む。あんまり美味しくないけど、さっきまでの気が重くなる未来が少しだけ軽い。かつ君に話しておいたこともある。秀太がわかってくれたこともある。何より、本田くんの感謝の言葉だ。
本田くんは迷ってるときとにかく悩む。悩んで悩んで道が見えたとき、いつも決まって感謝の言葉が出る。
間違いなく、この言葉はなにかを見つけたんだと思う。きっと本田くんらしい何かの選択肢を見つけたんだと思う。
秀太は不思議そうな顔してスマホと俺の顔を見比べて、やっぱりよくわかっていないようだ。本田くんきっかけにメッセージのやり取りはありがとう合戦になり、なんの違和感の無いいつもの日常のやり取りに2人で笑いながら、長居しすぎた喫茶店の会計を済ませて外に出た。
手に持ったスマホが震え、メッセージを確認するとやっぱりそこには本田くんがいた。
辞退をするってことは事務所に入らないことを意味する。それでも、4人でやるためにはその選択もほんとはあった。でも、なんとなく目を背けていた自分がいた。
正直、事務所の必要性を知っている本田くんからこの意見が出るとは思わなかった。
『その発想はなかった』
でも、みんなはどうなんだろう?
秀太は心にもないことを言うときは一人称が僕になることを知ってる。多分みんなわかってる。
『秀太は一人で頑張れば良いよ』
本田くんがそういってくれただけで、僕の今までの迷いが全部吹っ飛んだ。ほんとそのくらいスッキリした。
『僕は賛成しようかな?僕らをバラバラにさせる思惑なら壊せばいい』
本田くんの心配は自分の選択肢に僕たちを巻き込むこと。でも、きっと本田くんは辞退することを決めちゃってるんだろうな。
『っていうか、実際最後まで残ってたの本田くんなんだから辞退しても良いの?』
なんの違和感かはわからない。ほんと感覚的なもので、なにかかつ君が気になった。
『第一回順位発表式まで頑張ろうか』
僕たちならどんな状況でも打開できる。その自信だけはあって、これからが楽しみでワクワクしていた。
その時だった、耳障りな音が耳に響く。耳を押さえうずくまると世界が回っているようだった。
あれ、秀太は?
世界が歪んで見えて、近くにいるはずの秀太がどこにいるかわからない。
なんだ、どうなっているんだ?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。