少しの沈黙が流れる
なにを話そうか
どうしたら考え直してもらえるか
そんなことばかり考える
今までこんなことがあっただろうか
いや、ない
別れを告げられることも
告げることも
そんな俺には
"彼女を引き止める"
なんてことはじめてだった
方法もわからなかった
違う、こんな言い方したい訳じゃない
もっと、なんだろ
優しい雰囲気で
ほわほわした感じで話したい
別れる方向にはいかせたくないのに
こういう時に
自分の嫌な部分が目立ってくる
さっきまで見ていた記事の内容なんてもう忘れた
彼女もスマホを構うのをやめた
俺、必死だな
でも当たり前じゃん
好きだから
別れたくないから
誰でもそうだろ
好きだから付き合うし
好きだから別れたくない
そういうもんだ
今までの俺を除いて
俺に話す隙すら与えてくれない
淡々と話す彼女
彼女のこんな冷めた顔を見るのは
はじめてのことだった
だめだ
俺が言う言葉ひとつひとつが
過去の俺に返ってくる
そして
今の俺の心に刺さっていく
もっとひとりひとりと
真面目に付き合えばよかったのか?
なんて、今更思ってももう遅い
そんなこと自分が一番わかってる
だから辛いんだ
「今の太我やだよ」
この言葉が重く俺に伸し掛る
なんでだ
なんでこんなことに…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。