第14話

1年と数ヶ月前
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2021/03/24 10:47
1年と数ヶ月前____________。










母「海斗とあなたに大事な話があるの」


そう言ってリビングのローテーブルを囲み、パパとママが私達に話し始めた話は………





最近、体調に違和感を感じたママが病院で検査を受けた





医師から告げられた診断名は____________




















_________Malignant Tumor




















悪性腫瘍_________




















つまり……




















____________癌。















治療には、恐らく年単位の時間がかかる。手術をして、その後は抗癌剤治療が何クールも必要になるだろう



抗癌剤治療が終わっても、再発や転移をしていないか定期的な通院が必要になる 





最悪再発や転移が認められた場合は、再手術や追加治療が必要となる










治療にかかる費用や、治療中の生活環境………



パパとママで色々話し合った結果、ママがゆっくり治療に専念する為には日本が良いのではないか____________





それがパパとママ、二人が出した結論だと言う















あなた「……えっ…?何…言ってるの?ママが……?」


突然そんな話を聞いても、現実味がないというか、まるで他人事っていうか



だって目の前にいるママは、いつもの元気なママと何処も変わっていないのに……





ドラマの話みたいに「信じられない」っていう言葉が頭の中をグルグルしている____________










これは現実だと言い聞かせ肯定し受け入れようとする私と、これを否定して現実として受け入れたくない私



心の中で2人の私が葛藤しあっていて……












父「そういう訳だから、家族皆で日本にk____________」
母「_______________それでね!」


パパが言い終わらないうちに、パパの言葉を遮ってママが喋り出した



ママのよく通る声にハッと我に帰る





母「それでね!ママだけ、日本に帰ろうと思うの」










あなた、父、兄「「「_____________はぁぁぁ?!」」」


皆が一斉にママを見つめる





母「だって、せっかくパパの夢が叶ってアメリカに来れたのよ。ママのせいで、その夢を諦めて欲しくないの
それに、パパが側にいるからってママの病気が治るわけでもないしね!
まぁ、"寂しいな"って感じる事はあるかもしれないけど………
だから、パパは毎日電話かメールをして頂戴ね。
ママはね、パパが楽しそうに夢を追いかけている姿を見ているのが好きなのよ。その方が、ママも元気出るわ〜」



そう言って「フフフ………」と笑うママは、とても深刻な病気を告げられたとは思えないくらい綺麗な笑顔だった





兄「……じゃあ、俺も。……こっちの大学通って良い?」


お兄ちゃんが躊躇いながら口を開く





兄は予定通りあと半年でハイスクールを卒業出来れば、秋からは大学生だ





兄「母さんの事はもちろん心配だけど、俺こっちでMBAとりたいんだよね」


母「そうね、もうあなた達も自分の想いや意志があるわよね。うん、良いんじゃない?
生活の事とか、お金の事は何とかなるでしょ〜」










あぁ、そうだ………



ママは昔から、よく言えば"大らかで何でも受け入れる"性格。悪く言えば"行き当たりばったり"な性格だった!!


父「そうだな、ママが言う通りだな。ママと2人で結論を急いだりして悪かった!
よし!お前達の将来の事も考えながら、今後の事を話し合おう!家族会議だ!!」





そして昔からパパは、ママが言う事は大概受け入れるんだった____________
 














家族会議の結果____________





兄は今秋からのアメリカの大学入学を目指し、入学後は大学の寮に入ることになった





私はママの側にいたくて……一緒に日本へ帰ることに決めた





ママと離れることが心配なのは
パパもお兄ちゃんももちろん同じ気持ち





特にパパは最後まで「ママの側にいる!」と言い張り「アメリカで夢を追い続けて欲しい」と言い張るママと珍しく言い合いが続いた





最後は条件付きでパパが渋々折れた


父「じゃあ、宮城のお婆ちゃんに全てを話して
お婆ちゃんの協力が得られる状況だったら、パパはアメリカに残るよ
ママとあなた、二人が住むのは宮城になるけど……。あなたはそれでもいいか?
お祖母ちゃんが側にいてくれれば、パパも取り敢えずは安心だからな……
東京のお祖父ちゃんとは、パパがアメリカに来る時に関係が拗れちゃったから……。ゴメンな……。戻るのが東京だったら、こっちに来る前の友達にまた会えたかもしれないのにな」


眉を下げて申し訳なさそうな顔をして話しかけてくるパパ





あなた「大丈夫!新しい場所に行けば、また新しい友達が出来るから!!」


私の事を心配するパパに、これ以上心配させまいと笑顔を見せて、出来るだけ元気良く言葉を返した










東京_______________、は昔の事……





自分に言い聞かせるように、心の中で呟いた

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