第54話

いつも通り
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2020/12/28 05:34
突然押しかけたら、迷惑だよね……



でも…大地に会いたい……





______埼玉……森然高校…



いつだったか大地が〈夏休みに入ってからの遠征は"森然高校""埼玉の"……〉
と言っていたのを思い出す


携帯画面に表示されている森然高校の最寄駅を電車の路線図の中に探す








あなた「(大地に会いたい…ちょっと顔を見るだけだから……)」



大地にとって、この合宿が大事という事は分かっている



私の余計な行動が、せっかくの合宿に水を差すという事も分かっている





でも誰かに、この不安を吐き出したかった……



ただ側にいて、話を聞いて欲しかった。



"誰かに話を聞いて欲しい…"
そう…気持ちを吐き出して、少しでも楽になれるならば……そう思った



でも、お爺ちゃまやお婆ちゃまに心配をかけるわけにはいかない______





私の頭に浮かんだ顔は








____________大地















あなた「(______ダメだ……落ち着け!泣いたらダメ……)」



電車に揺られながら、少しでも気を緩めたら溢れそうになる涙を必死に堪える








頭の中では先程の、ママの面会へ行った病院での出来事が蘇っていた______















夏休み______





ママの入院に合わせて東京の予備校へ通う為、
東京の祖父母の家にお世話になって数日が過ぎた





私は毎日予備校帰りにママの面会に通っていた





今日もいつも通り予備校が終わって、その帰りにママの面会に行った



ママの様子はいつもと特に変わりない





面会が終わって「じゃママ、また明日ね」と病室を出た





. . . . .
いつも通り……





そして、いつも通りナースステーションの前を通り過ぎようとした時______










白先「こんにちは、藤原さん。今、時間あるかな?少し話せる?」



ママの主治医である白石先生に呼び止められた




あなた「____________えっ、?」 



ママの面会に来れば、先生と顔を合わせる事なんて珍しくない。いつもは笑って挨拶をして通り過ぎる



なのに、今日は呼び止められた。それだけなのに______





ゾクリ____________、


背中を冷たいものが流れる








「嫌です…」そう言って、そのまま立ち去りたかった



でも______

私の口は「はい、何ですか?」と動いていた








先生に促されて、ナースステーションの隣にある『カンファレンス ルーム』と表示されている部屋へ入った



促されるまま、椅子に座る



白先「大丈夫?お水、持って来ようか?」



余程、私が緊張しているように見えたんだろう。先生が気を遣ってくれた



確かに口の中はカラカラだ……



それなのに、強がる自分がいた





あなた「いいえ、大丈夫です。話って何ですか?」


白先「あぁ、うん。あのね……」

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