澤村 side
藤原と出会って、もうすぐ1年が経とうとしている
今ではテスト前はどちらかの家か図書館で一緒に勉強するのが当たり前になっている
あなた『今度のテスト勉強、どこでやる?』
澤村『あ〜、じゃあ……俺ん家にしようか』
____________今度のテストが、今年度最後のテスト
・
・
あなた「はぁ〜……。ちょっと休憩!
脳のエネルギーは"糖分"なのだ〜!……という事で、さっきのケーキ食べない?」
組んだ両手を「ん〜…」と伸ばしながら、藤原が顔をこちらへ向けてくる
澤村「おぅ、じゃあコーヒーでいい?ちょっと待ってて」
あなた「あ、手伝うよ〜」
一通り参考書の問題を解いて、藤原が持ってきたケーキを食べながら休憩することになった
一緒に2階の部屋からキッチンへ降り、コーヒーを煎れる
藤原がコーヒーとケーキをトレイに乗せて部屋まで運んでくれた
あなた「早いね〜。来月には、もう私達2年生か〜」
猫舌の藤原が、コーヒーを「フ〜…フ〜…」と冷ましてから、慎重に口を付けている
澤村「あ〜…、うん。そうだな………」
そんな横顔をぼんやりと眺める
あなた「バレー部、どんな後輩が入ってくるかな?楽しみだね!」
澤村「問題児は嫌だな〜…。"クチだけ返事"みたいな反抗的なヤツとか………」
目線は藤原へ向けたまま、自分もコーヒーを一口啜る
あなた「え〜!?クチだけ返事?なにそれ〜?(笑)」
話しながら、目を細めてクスクス笑う藤原の隣で
今日も俺の心臓は煩い……
あなた「新学期になったら、クラス別々になっちゃうのかな……?」
コーヒーカップを両手で包み込むように持ったまま、藤原がポツリと呟いた
澤村「えっ……?」
それはあまり考えないようにしていた事で………
烏野高校は学年が変わるたびにクラス替えがある
就職か進学か、さらには文系か理系か
進路別でクラス分けされるのだ
澤村「藤原は進学だよな。で、文系?」
カップを静かに置き、ケーキを食べ始めた藤原に問いかける
あなた「うん。澤村くんは?」
澤村「うーん……。狙えるなら、県内の国立……。文系か理系かは、まだちょっと決めかねてるかな……
てか藤原は古文と漢文、まだちょっと苦手だろ?なのに何で文系?どっちかって言ったら、理系の方が得意だろ」
最初は気付かなかったが藤原は
古文と漢文以外は、多分……俺より優秀だ
理数系の科目は、毎回ほぼ満点を取っている
あなた「ん〜……、将来の夢のためには大学は東京の大学で、文系の学部に行きたいんだよね〜。ま、できればね……」
澤村「へぇ〜…将来目指すもの、もうあるんだ。
すげーな……。ちなみに、何になりたいの?」
ケーキを少し大きめに切り取り、一口頬張る
口の中にその甘さが広がる。と同時にクリームの甘い香りが鼻に一気を抜ける
あなた「それは……。秘密〜!(笑)」
そう言いながら、藤原はまた笑う
突然、藤原の笑い声が消えた
………?
視線を感じて、ケーキを食べる手を止めた
自分に向けられた視線。その出所である藤原へ____________、今度は俺が視線を向ける
その瞬間、俺の視線から逃げるように藤原は俯いた
あなた「新学期になってもまた同じクラスがいいな〜…。
離れ離れになっちゃったら寂しいじゃん…ね…?」
俯きながら、隣に座っていても聞き漏らしてしまいそうな小さな声でそんな事を言うから____________
澤村「じゃあさ、俺たち……
____________付き合う?」
自分でも驚くほど不意に言葉が出た
____________え"ぇ"ぇ"ぇ"ぇーーーー!?
自分で言った言葉に自分で驚いた!
藤原もあまりに突然で驚いたんだろう
俯いたまま、固まっている
澤村「あっ!あ〜、いや………これは、その〜………あれだ!ほら、あれ、あれ………」
____________あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁーーーーっ!!
「あれ」って何だよ?!俺は何を言おうとしているんだ?というか、何を言ったんだ?!
一気に顔が熱くなる
全身から汗が噴き出すような感覚に襲われる
あなた「………ホント?」
俯いたまま、藤原が口を開く。表情は……よく見えない
艶黒の長い髪の隙間から見えるその耳は赤く染まっている
次に出てきた言葉は____________
あなた「私でいいの……?
____________嬉しい//」
そう言って藤原は俺を見上げる
頬を赤らめながらあのふわっとした笑顔を見せた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。