第123話

re:球拾いナメンな
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2021/03/26 01:03
大地「よし、整r____________」
「椿原ファイッ」「オ"ェーイ!!!」





大地が一瞬早く声掛けしたそれは、椿原学園の選手達の声掛けによって掻き消されてしまった










ピーーーーーッ




「「「お願いしァーース!!!」」」





主審のホイッスルで両校の選手が挨拶を交わし、それぞれコート内の自分のポジションへと散って行く










ピーーーーーッ!



キュキュッ…ドオッ!



烏野の影山くんのサーブで試合が始まった










何だろう…… 噛み合っていないというか。やっぱり緊張…なのかな?
動きはまだ多少の硬さが残っているとは言え、皆の表情かおはそこまで固くはないと思うんだけど…



なのに、皆それぞれがようやくボールに追いついている、ようやく触っているという感じ……





滝ノ上「……バレーは常に空間を認識しなくちゃならない競技。緊張と初めての大舞台体育館で、それが乱されている事は間違いない。そして、それが最も影響を受けるのは……精密を極める影山のトスワークだ」


嶋田「あぁ……恐らく、この体育館に慣れるまでにはもう少し時間がかかるだろうな」



私の心配を汲み取ったかのように、横から滝ノ上さんが「多分、もう少しの辛抱だから」と眉を下げながら教えてくれた










「ナイスキィィィーーーー!!!」



ようやく東峰くんのスパイクが決まり、応援席から声援が飛ぶ





あっ!影山くんと日向くんが合わない!!



日向くんが咄嗟に頭で相手コートにボールを押し込む





凄い身体能力……










滝ノ上「お、今日は忠の投入が早いな」


滝ノ上さんの隣では、まるで自分の弟が試合に出ているかのように、両手を合わせて祈る様な目線をコートに送る嶋田さんの姿がある



あなた「……嶋田さん?」


滝ノ上「あ〜、忠ね、嶋田コイツの弟子なの。サーブのね。って言うのも____________」


不思議な顔をして嶋田さんを見つめる私達に気付いて滝ノ上さんが色々と教えてくれた





なるほど……説明を聞きながらコートを見下ろす。山口くんがサーブの位置に着く





山口くんが打ったサーブで相手チームが乱れる。烏野のブロックが止めた



「今日、初ブローーーーーック!!!」

「ぅおおおっ!!!」


と再び応援席が盛り上がる



「これが「サーブ アンド ブロック」サーブで崩してブロックで仕留める。理想的な攻撃だ!」と嶋田さんが興奮しながら教えてくれる



山口くんのサーブが続く










大地「オォーーッシ、サクッと2桁乗せんぞー!」



大地の叫ぶ声が、歓声の中僅かに聞こえて来る





烏野も点を重ねる。でも、今一歩点差は詰まらない……





あ……でも影山くんの顔は冷静だ。他の皆も焦っている感じはない。そして日向くんはギラギラしてる









滝ノ上「おぉっ、っ!!」



飛び込んでいた日向くんの手元に向かって影山くんから放たれたトスがダパァッ!と決まった



来たーーーーー!!!



いつもの変人速攻が決まった!!





何が起きたのか分からないと言った感じに「シンッ……」と静まり返る椿原応援団



解説席からも一瞬間があってから「決まったーー!!烏野高校のリーサル・ウェポン!」と絶叫に近い叫び声が響き渡る。会場が更に沸き立つ










あなた「あっ!」


奈緒「ん、どうした?あなた」


あなた「あ、えっと……何でもない」



ふとコートの外を見ると、隣のBコート脇にクロ達の姿が見える





いやいや……今は大地達の応援だから……

応援に集中!



自分自身に言い聞かせる










あなた「あ、____________ナイスレシーブ!大地!!」
「さ"わ"む"ら"、上手く"な"った"な"ぁ"っっ」

「そうっスね」



____________!?えっ、誰……?





突然、隣に現れた男の人2人。しかも、1人は感極まっているのかボロボロと涙を流している





黒川「あ、俺ら烏野OBです。前主将と前々主将やってました」



あ〜…先輩?だ……!



言われてみれば、黒川さんは思い出せる。もう一人は…何となく?面影は記憶にあるかも……





突然現れた2人の先輩達の横顔をチラチラ見ながら、昨年、一昨年の記憶を甦らせる










試合は影山くんがツーアタックを決めて、応援席もコート上もノっている





徐々に点差が詰まっていく。でも、中々逆転はさせてもらえない




相手の強烈なスパイクが決まる。烏野も東峰くんがやり返す



試合開始直後の硬さは、最早どちらのチームにも微塵もみられない。ラリーが続く










あ、日向くん!!





月島くんのブロックを抜けたボールが日向くんの胸に当たる



あなた「ぅわっ…あれ、痛そう……」


滝ノ上「?……いや。あれは多分、上げにいったんじゃねぇのかな?」


奈緒「どういう事?ですか……?」


滝ノ上「……いや、俺も多分だけど。日向あいつ…分かっててあそこに居たんじゃねぇかな
いや、たまにあるんだよ。スパイカーの手の角度、ブロックの位置とかが見えるんだ。んで、「あ、ここに来る!」って分かるんだよ。スパイクのコースが読めるって言うのかな……」





あ、それ……前にクロが言ってたヤツだ








かつてのクロの言葉が頭の中に甦る





____________「球拾いナメンな」

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