第69話

たった一行のメッセージ
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2020/12/28 14:09
あなた  side





クロと別れて電車に乗り込んだ





携帯画面を開くとパパからメッセージが届いていた『仕事の調整をつけて一度帰国するよ』
そのメッセージを呼んでホッとする








あなた「(あ、大地………)」



大地の事だから、合宿中に私が押しかけて来たと聞いて驚いて飛び出して来ただろう………



 

あなた「(きっと心配してるよね………)」



大地にメールを送る
『突然押しかけてゴメンね。勉強の息抜きに、ちょっと大地の顔が見たくなっちゃった

でも、合宿の邪魔しちゃいけないから、やっぱり帰るね』








そしてクロにもメールを送り、ママの話をした私を気遣って駅まで送ってくれたお礼。それから、パパから連絡があった事を伝えた








そうだ………



クロには昔からそういう優しさがあった


______相手の気持ちを考えて行動できる優しさ





昔、研磨のパパが
サッカーをしに友達と公園へ行こうとしたクロに「研磨も連れて行ってほしい」と声を掛けたことがあったらしい

クロは「研磨は行きたくないと思うよ。俺"行きたくない"もよくわかる。でも研磨は好きな事なら一生懸命やるから大丈夫」ってお父さんに言ってくれてた______

研磨が少し嬉しそうな表情で私に話してくれた事があったっけ………



あなた「(変わってないんだな……クロ…)」





そんな昔の事を思い出しているとクロから返信があった





『どーいたしまして』

たった一行のメッセージ……








あなた「(何であんな事言っちゃったんだろう………)」



携帯画面に表示されたメッセージを眺めながら
クロに放った言葉を思い出す





「いや…久しぶりに会ったら
何か…クロ、ちょっとカッコ良くなってたし?
「駅まで送る」な〜んて
サラッと言える様になっちゃってたし?
てっきり彼女いるんだと思ったよ」





あんな事……








あなた「(____________!)」


握っていた携帯が振動し、思わずクロの顔が浮かぶ





画面に表示された名前は





____________大地…








あなた「(何で、クロの顔が浮かんじゃったかな………)」



きっと、さっきまで一緒にいたせいだ



そう自分に言い聞かせる








だってもう昔の事____________



理由はよく分からなかったけれど"クロに嫌われてしまった"そう感じて凄く悲しかった

いつも当たり前のように一緒にいたクロだったから、その悲しさは尚更で……

"これ以上嫌われたくない"そう思ったら恐くて話しかける事が出来なくなった

そして、そのまま一度も言葉を交わす事が出来ずにアメリカに引っ越してしまった





それでも、私の中から消える事はなかった想い____________



もう一度会いたい……



でももう、どんなに願っても叶わない



もう願いが叶う事はない





そう自分に言い聞かせて手放した








私の初恋____________。

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