第74話

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2020/12/30 07:04
澤村  side





夏休み合宿遠征も遠征後の練習も、部活は充実している!



あなたが東京の予備校に通っている間も電話やメールで連絡は取り合っている
でもたった二週間とはいえ、あなたに会えないという現実は、正直淋しさを感じずにはいられなかった


いや、それよりもやはり……黒尾との一件が、俺の中であなたに会いたいという気持ちを強くさせていた








東峰「大地…夏バテか?何か…テンション低いって言うかサ、元気無くないか?」


澤村「えっ!?そうか…?」


休憩中、旭に指摘され惚けた返事を返す



澤村「(イカン、イカン。
部活中は、あまり考えないようにしていたのに______)」





ドリンクを飲み干して「______ッシ!」と気合いを入れる



澤村「何言ってるんだ、旭!
そろそろ春高予選の組み合わせが出る頃だ。テンション低くなんてしていられるか!」


拳を握って気合いの入った顔を向ける













ガタ、ガタガタッ____________





武田「____________あ、澤村くん。これ!」



武田先生が、紙をヒラヒラさせながら体育館へ入ってきた


眼鏡をクイッと直し、俺の目をグッと見据える。その紙を俺に渡しながら…


武田「春高一次予選のトーナメント表です!」





「「「(((____________!!)))」」」



皆の視線が一斉に集まる





日向「うぉ〜ぉ〜〜!見たい、見たい!俺にも見せてください!!キャプテン!」


澤村「あ、ちょっ……日向!」


影山「あぁ、日向フライングだ!ボゲェ!俺が先だ!」


田中「まぁ、待てお前ら。こういうのは、先輩からというものだ」


西谷「龍、俺にも見せろ!!」


トーナメント表はいとも簡単に俺の手から奪われ、次々にこいつらの手から手へと回される


菅原「こらこら、お前ら…。あ、ちょっ…引っ張んな。こら!破れんべ!あ"ー…」


澤村「____________お前ら…うるさ〜〜〜い!!」



「「「____________、!!」」」



全員が一斉に固まる





鵜飼「ったく…お前らなぁ〜」



鵜飼さんがスガの手からトーナメント表を受け取る



澤村「____________、整列!」



鵜飼「いいか、お前ら____________」











練習が終わり部室へ入った途端、旭が口を開く


東峰「………いよいよ最後の春k____________」
菅原「旭〜。さっさと着替えんべ〜」


東峰「____________、スガ!?」


澤村「旭〜…まだトーナメント表が発表されただけだぞ」


東峰「いや、俺は…こう…」
澤村「……だから、喋るな。IH予選の時も言っただろ?俺達は予選を勝ち抜いて、全国行くんだ」


菅原「だべ、旭。はい、それじゃあ…さっさと帰んべ〜」








着替えながら携帯画面を開くと、あなたからメールが届いていた



あなた『明日、宮城に帰るよ!帰ったら会える?二週間会わなかっただけなのに
凄く久しぶりな気がする…会いたいな……』



____________、!!


澤村『俺も…俺も会いたいよ
何時にこっちに着く?明日の練習は昼までなんだ。だから______』
 

すぐに返事を送る





澤村「(二週間ぶりにあなたに会える!!テンションが上がる!!)」














あなた side





『明日、宮城に帰るよ!帰ったら会える?二週間会わなかっただけなのに
凄く久しぶりな気がする…会いたいな……』



メールを送った翌日____________

 













あなた「____________大地!」


新幹線乗り換え口の改札を抜けると、大地の姿があった。人混みを掻き分けて大地の元へ駆け寄る



澤村「あなた、お帰り。…ん、荷物」


「大丈夫だよ」と言う私の言葉を聞き流して、旅行カバンを私の手から奪う



その瞬間____________



ギュッ



あなた「____________、えっ!///」


大地に腕を掴まれ、引き寄せられた。そのまま抱きしめられ、肩に顔を埋めてくる



あなた「____________ちょっ、大地…どうしたの?」


大地の髪が頬に触れくすぐったい。けどいつもと違う雰囲気の大地を前に、動いてはいけない気がして…されるがままに身を預ける


大地は何かを確かめるように、一瞬腕の力を緩めて私の顔を見てからもう一度ギュッと抱きしめる。サラリと髪の中に指を通して、何度も頭を撫でる



大地の匂いに包まれながら一気に顔が熱くなる



あなた「あ、部活で疲れてるのに…わざわざ来てくれて、ありがとう」


二週間ぶりの顔を横目で確認しながらそう言うと、腕の力が緩み解放された



澤村「…ん?まぁ、少しでも早くあなたに会いたくて……顔見たら、安心した……」


私から体を離す大地の頬が、赤く染まったのがわかった



「安心した」って何だろう?手を繋ぎ、並んで歩きながら、大地の横顔を眺める





突然の大地の態度といつもと違う雰囲気に、恥ずかしさと多少の違和感を感じる





あなた「………………」


澤村「………………」



大地も何かを感じているのだろうか。お互い無言で歩く








澤村「あ、!なぁあなた、あれ一緒に行かないか?」



私達の間を流れる空気を変えるように、大地が駅の構内に貼られたポスターを見上げながら話題を変えてきた


大地の視線の先を追って、私もそのポスターを見上げる





あなた「______あ、花火大会…。去年、台風で中止になったヤツだよね。行きたい!」



広告には大きな打ち上げ花火の写真と、第○回 花火大会 の文字が描かれている



さっきまでの違和感は忘れて、花火大会の話に一気に食い付く





大地と行きたい……





____________だって……宮城で過ごす最後の夏になるかもしれないから

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