あなた side
「____________はい、以上で終了です。皆さん、気を付けてお帰り下さい」
「「「ありがとうございましたー…」」」
ガタッ
ガタガタ…
オープンキャンパスは予定通り終了。担当者から最後の挨拶をされ、参加者は皆一斉にもらった資料を鞄や手提げにしまい席を立つ
黒尾「……で、あなたは行きたいとこあんだろ?連れてってやるよ」
先に荷物をしまい席を立ったクロが私のすぐ隣に立ち、話しかけてきた
あなた「本当?!ありがとう!嬉しい〜!
ん〜とね…じゃあ、スカイツリー!!
言いながら、私も慌てて資料をバッグにしまい席を立つ
黒尾「はいはい……」
クロは「(あ、やっぱり……)」みたいな目で私を見てから一足先に歩き始める
あ、なんか。今……
感じた事をストレートにクロの背中に向かってぶつける
あなた「ちょっと…今、田舎者扱いしたでしょ?」
黒尾「はぁ〜?!べっつに〜。してませんけど〜!」
足は止めずに振り返りながらニヤリと口元に笑いを含んだ顔を向けてくる
小馬鹿にするようなクロの表情に若干ムスッとしながら、その背中にもう一度言葉をぶつける
あなた「あ、やっぱり田舎者扱いしてる!」
今度は足を止めて振り返り、私の頬を軽くつねってきた
黒尾「____________クッククク…アハハ…… お前、反応が単純過ぎんだよ…」
クロが笑い出した。笑われて……
"笑われた事が"なのか、"田舎者扱いされた事が"なのか……恥ずかしさを感じて顔が熱くなる。言い返す言葉が見つからずに下を向いてしまった
急に黙った私の様子を気にしたのかクロが少し屈んで私の顔を覗き込んでくる
黒尾「…悪りぃ。ちょっと揶揄った。」
バツが悪そうな顔をしながら、私の頭を優しくポンポンと叩く
まるで拗ねた子供を扱うように優しく頭を触られて、さっきとは違う恥ずかしさとくすぐったさを感じる
あなた「「揶揄った」って…好きな子苛める小学生みたいな事しないで下さ〜い」
やられっぱなしは悔しくて、私も言い返す
黒尾「________________、なっ!?///、、は、はぁ〜??」
あなた「____________えっ!?な、なっ、何??」
クロの予想外の反応にビックリした……
一瞬身を仰け反らせてから、今度は私がクロの顔を覗き込む
クロは私の視線を避けるように顔を逸らして、さらにその顔を隠すように手を当てている
あなた「……えっ、クロ?」
私の呼びかけに視線だけ私に向けて「……コホン」と一つ咳払いをする
黒尾「んだよ、いきなり……
______、……ほら、行くぞ」
私から顔を逸らしたままクロはさっさと歩き始めてしまった
後ろから見える耳が、赤く染まっていたのは…
____________気のせい……かな?
・
黒尾「あなた、帰りの新幹線何時?」
電車に揺られながらクロが今日のプランを練ってくれている
あなた「ん〜…?帰りの時間はまだ決めてない。明日は日曜日だから、帰る時間は遅くなっても大丈夫だよ」
黒尾「まぁ、そうは言ってもあんまり遅くなりすぎるのは良くねぇから……
じゃあスカイツリー行って、どっかで飯食って東京駅戻るか…」
あなた「それなら……
ねぇねぇ…。夕飯は適当に新幹線の中で済ませればいいからさ、クロのお祖母ちゃんに会いたいな!」
研磨にも会いたいけど、今日も部活ってクロが言ってたし。毎日遅くまで練習してるから、きっと今日も会うのは無理だよね…
黒尾「あ〜…じゃあ、祖母ちゃんに連絡しとくから、ウチで夕飯食べてくか?」
あなた「えっ?!…いや、いいよ!いいよ!
突然お邪魔して夕飯食べさせてもらうとか……迷惑じゃん!」
黒尾「そんな遠慮する関係じゃねぇだろ。
それに、あなたに会えたら祖母ちゃんも喜ぶわ。んじゃ、決まりな!」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。