第68話

昔話④、今更
1,319
2020/12/28 13:33
俺と研磨の日常からあなたがいなくなって





会いたい……



会いたい……



____________あなたに会いたい……





何回、何十回、何百回……何度繰り返し願ったんだろうか















俺はあと数ヶ月で小学校の卒業を迎えようとしていた______





その頃にはもう、あなたに会いたいと願う事はなくなった


なぜなら


______もうあなたには会えない。それが現実。


いつの間にか、そう受け入れていたからだ

 

それが一歩大人に近づくという事なのか…ただの諦めなのかはわからないけれど















男友人「おい!鉄朗!!」


突然、ソイツに呼び止められた



ソイツは………いつだったか、俺とあなたの事を揶揄ってきたヤツだった





黒尾「あ〜?!何だよ!?」


当時の事を思い出し、舐められたくない一心で
威嚇する様な態度で見返す



男友人「いや……あ、あのさ…あの時は……悪かったよ…」





黒尾「(____________はぁ?)」



突然謝罪され、気が抜けた





男友人「あの時……実は、羨ましかったんだ。鉄朗とあなたが仲良かったから……
だから……羨ましくて、揶揄ったんだ

…本当にゴメン!
俺…さ、あなたの事が好きだったんだ……」










____________あなたの事が好き……



____________あなたが好き……






その時、その言葉が俺の胸にストン____________、と落ちてきた




黒尾「(あぁ…、そうだ。俺、あなたの事が好きだったんだ……)」









自分の気持ちに気が付いた時には、あなたはどう足掻いても手が届かない所へ行ってしまった後だった















恐らく



いや、確かに………








あれは俺の初恋だった____________。





俺は、かつての淡い気持ちを思い出した








____________"奇跡"ってこういう事を言うんだろうか…?





______会いたい…


______会いたい…


____________あなたに会いたい…





でも、もう二度と会えない____________



どんなに願っても叶わない



そう思っていた。それが思いがけず、もう一度会うことができた



でも、これが奇跡的な再会だとしても………





再会した時には、既にあなたの隣には他の男がいた








そんな事をボンヤリ考えているうちに、森然高校の目の前まで戻って来ていた










黒尾「(____________ん!?)」


ポケットに入れていた携帯の振動を感じる。画面を開く



あなたからのメールだった


『クロ、駅まで送ってくれてありがとう
あのまま一人になっていたら、どんどん不安になってきっと泣いてしまっていたから……

クロのお陰で、気持ちが落ち着いた

あの後、パパからも"仕事の調整つけて一度帰国する"って連絡あったから大丈夫!本当にありがとね!』









今日、改めて気付いてしまったこの気持ちは………








黒尾「(____________今更。だよな……)」



あなたからのメールを二度、三度と読み返す


『どーいたしまして』


たった一行のメッセージを送った

プリ小説オーディオドラマ