第63話

彼女
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2020/12/28 06:47
あなた   side





"誰かに話を聞いて欲しい…"


気持ちを吐き出して、少しでも楽になれるならば……

確かにそう思った




____________だからといって"誰でもよかった"わけじゃない





不安で仕方がなかったとは言え、数年ぶりに再会した幼馴染______しかも、かつて私の事を避けていたクロ相手にママの話をしてしまった事は自分でも驚いた

クロが言う通り、懐かしさに気が緩んだのだろうか?自分でもよくわからない



そしてこの再会を機に再びクロの隣に自分が座っている現実。これにも驚いている



でも、数年越しの"仲直り"に、口の中でアイスが溶けていく様に心に刺さっていたトゲが無くなっていく____________











アイスを食べ終わり、駅に向かって歩き始める





黒尾「へぇ〜……それでおじさんアメリカに残ったのか…」


あなた「うん、お兄ちゃんも向こうの大学通ってる。MBA取りたいんだって」


黒尾「まぁそーいう感じ、おばさん"らしい"っつったら"らしい"のかもな……
昔も何かっつーと「どーしたら皆が幸せになれるか」みたいな事、良く言ってたもんな〜…」


あなた「クロん家は?クロパパと、お婆ちゃん、お爺ちゃん、元気?」


黒尾「あー…ウチは変わんねぇな。研磨んトコも、別に変わりねぇよ」


あなた「懐かしいな〜。クロん家のお婆ちゃん、また会いたいな。研磨ママにも会いたいな」





会えなかった時間を埋める様に、アメリカでの生活やお互いの近況を話しながら歩いた





黒尾「今度ゆっくり遊びに来たら良いんじゃねぇの?受験が終わったら…とか……
っつーか、お前受験どこ狙ってんの?こっちの大学?」


あなた「ん〜…できれば、こっちの大学が第一志望……まだはっきりとは決めてないけどね……
夢を叶える為には、こっちの大学がいいんだよね〜」


黒尾「へぇ〜…"夢"ねぇ……」



何を思ったのか口元に笑みを浮かべつつ、クロが私を見下ろしてくる


あなた「あ!今、笑ったでしょ!!って言うか馬鹿にしたでしょ?!」


黒尾「いや、悪ぃ悪ぃ……別に馬鹿にはしてねぇよ」


指摘を受けて、クロは慌てて右手で口元を隠す















黒尾 side





受験の話をしながらあなたが「夢」なんて言い出したから"ある事"を思い出して…思わず笑ってしまった。


笑った事を指摘され、慌てて口元を隠す





黒尾「いや、悪ぃ……別に馬鹿にはしてねぇよ。 
………で、サームラも?サームラと一緒にこっちの大学狙ってんのか?」


あなた「ううん…大地は県内の大学志望……」


黒尾「へ〜…じゃあ、もしかしたら来年は遠距離か…?
サームラ、そういうの何も言わねぇの?」


あなた「う〜ん…
大地は「やりたい事があるなら応援する!」って言ってくれてる…
でも…やっぱり"遠距離"って気になるよね?

クロも、もしも彼女と遠距離になっちゃったら
嫌だよね………?」





あなたは「ね……?」と俺を見上げて少し首を傾ける





____________、!


その仕草にドキリとする。顔に熱が籠るのを自覚して慌てて顔を逸らした



黒尾「(…いや……なんっつーか。……そーゆーの、俺に聞くなよ……)」




コホンッ______と咳払いし、視線をあなたに戻す



黒尾「………別に…"距離"が全てじゃねぇだろ?ま〜…俺今、彼女いねえから…よく分かんねぇけど……」


あなた「えっ!?クロ彼女いないの?!」


黒尾「何だよ?!そんなに驚く事じゃねーだろ!今はだよ!今は、な!!
っつーか、彼女いなくて悪かったなぁ!俺は今、バレーに夢中なの!バレー、一筋!!
どっかの〜 黒いジャージの〜 チャラチャラした主将とは違うんですぅ〜!!」


あなた「へ〜…バレーが上手で、勉強も出来て、尚且つ可愛い彼女がいるなんて…
その主将カッコいい〜!!」


黒尾「はぁ〜?"可愛い彼女"って何処にいるんですかぁ?いらっしゃったら是非お会いしたいんですけどぉ〜」



何故か言い合いになってしまった





あなた「うっわ〜…何か…ムカつく〜」


あなたは頬を膨らませる





あなた「………っふふふふ。あははは…
あ〜、おっかし〜…あははは……」


次の瞬間には、何故か笑い出した。しかも大爆笑

______と思ったら



あなた「いや…久しぶりに会ったら、何か…クロ、ちょっとカッコ良くなってたし?
「駅まで送る」な〜んてサラッと言える様になっちゃってたし?
てっきり彼女いるんだと思ったよ」



突然真顔になって、そんな事を言い出した








そんじゃあ、____________その"彼女"にお前がなるか?



心の中であなたに問いかける








あなた「あ……駅、着いちゃったね……」





俺の心の中の問いかけが
終わるか終わらないかのタイミングであなたが呟いた

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