あなた「はぁ〜……」
思わず大きな溜め息が出た
数日前に中庭で話した会話が未だに私の頭の中を占領している……
しかも……
あれから妙に意識してしまって、まともに大地の顔が見られない
面と向かって言葉を交わしている時は絶対に挙動不審になっている自信がある……
あなた「はぁ〜……」
また溜め息が出る
母「あなた〜。今、ちょっと良い?」
部屋で一人溜め息をついていると、ママが神妙な面持ちで部屋に入って来た
あなた「______________えっ?!な、何?」
ドキリとする……
ママが真面目な顔をして「話がある」と言う時は、病気の事とか、大概重要な話だ
________________ゾクッ…、
背中を冷たいものが流れる…
母「はい、これ」
部屋に入ってくるなり、ママは茶色い紙袋を私の目の前に置いた
あなた「………何?これ…?」
プレゼント……?にしては飾り気がないというかシンプルな、ただの茶色い紙袋
それに今日は誕生日でも記念日でも何でもない
母「開けて良いわよ」
その言葉に従って紙袋の中を覗く。中に入っていた物は………
________________タバコ?
いや、タバコよりは大きな箱
よく分からなかったので、紙袋から出してみる
あなた「なっ……!!」
紙袋から出した瞬間、それが何かがわかった
その箱が何なのかは理解したけれど
なぜママがそれを私に持って来たのか………
頭の中はパニック寸前!
あなた「ママ、何?コレ………」
袋から出て来た物は________________、
母「え?!見ればわかるでしょ?
________________condomよ」
……はぁ?!
チョットマッテ!チョットマッテ!!チョットマッテ……
もう頭の中はパニック!!
え〜っと……。1つずつ整理していこう
まずは、ママが真面目な顔をしながら「話がある」と言って来たけれど……
話し始めた内容は私の予想とは違い、病気の事ではなかった
まぁ、それに関しては一安心……
そして、だ……。ママが今、私にコンドームを手渡してきた
oh〜! OK!!
今解決すべき問題は、このコンドーム問題である!という事が明らかになった
あなた「で?!何でこれ?っていうか、これが……どうかした?」
コンドームに関する現時点での疑問をママにぶつける
母「3ヶ月くらい前だったかしら………
澤村くんとお付き合いしている事は、貴方から直接教えてもらったわ
澤村くん、良い子よね〜。いつもきちんと挨拶してくれて、真面目そうな"好青年"って感じでママも好きよ〜。昔のパパもね________________」
話しながら、ママの視線が"懐かしい過去"を思い出すような________________どこか遠くを泳ぎ始める
あなた「ママ!?話、逸れてない?」
母「あ〜、そうね、それでね……
貴方達はまだ高校生だけど、高校生でも"好きな相手と結ばれたい"と思う気持ちはママにも分かるわ」
________________「ママだって学生の頃はモテたし、人並みに恋愛したのよ〜」と、また話が逸れた挙句よく分からない自慢話を挟んでくる
________________私には世に言う"反抗期"という時期を過ごした記憶が無い。というか、恐らく反抗期は無かったのではないか________________
と自分では思う
一般的に反抗期を迎えると言われている時期に生活環境が大きく変わり、新しい環境に慣れる事に精一杯だったからだろうか
そして、今はパパや兄と離れてママと二人で暮らしている
ママとは仲が良い。クラスの友達の話を聞いても私とママは仲良し親子だと思う
ママには比較的何でも話している。というか、ママに対して秘密は何も無い
大地と付き合い始めた事もすぐに報告した
母「だからね、こういう事は大事なの!『恥ずかしい』と思ってしまうけれど……
万が一、何かが起きてからでは遅いのよ。万が一、何かが起きた時傷つくのは貴方だけではないわ。澤村くんもよ
だから、こういう事は『相手に任せておけば良い』では駄目よ。貴方自身もきちんと考えなさい。正しい知識を持って、相手の事も自分の事も想い合った行動を取りなさい
貴方も澤村くんも、そういう行動がきちんと出来るって信じてるからね________________」
そう言ってママは部屋を出て行った
・
・
「________________こういう事は大事なの!
貴方も澤村くんも、そういう行動がきちんと出来るって信じてるからね________________」
ママが去った後部屋で一人、ママから言われた言葉を思い出す………
ママが言っている事は理解できる
『恥ずかしいと思ってしまうけれど、大事な事』
いやいやいや………分かる、分かる。分かるけれどもね!
でも、こんな物を目の前に置かれたら、妙に現実的というか……、生々しいというか……
つまり、大地と私が……
se………!………!?
キャーーーー!!キャーーーー!!
うっわーーーー!やっぱり恥ずかしい、恥ずかしすぎる!
再び頭の中がパニックになりそうで、取り敢えずその箱は机の一番上の引き出しに閉まった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!