黒尾 side
電車から降りて、まずは祖母ちゃんに連絡を入れる
黒尾「祖母ちゃん「あなたと会えるの楽しみ」だってさ。んじゃ、行くか」
携帯をしまいながら、今や東京観光の代表的シンボルとなっている目の前の634メートルの鉄塔を見上げる
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あなた「うわ〜…高いね〜!高い高い!
何か、雲が近いね!
足元の町並みなんて、米粒どころじゃないね、もっと小さ〜い!
展望台までのエレベーターも速かったね!凄い!凄〜い!!」
っつー事で、スカイツリーに観光に来たわけだけども……
ま〜、あなたがはしゃぐはしゃぐ……
黒尾「あなた…そんなにはしゃいで疲れねぇの?」
あなた「えっ?!べっ、別に…はしゃいでるわけじゃないよ///
だから……田舎者扱いしないでよね!!」
俺に"はしゃいでいる"と言われた事が恥ずかしかったようで、あなたは頬を膨らませる
その顔をもう少し見ていたくて…少し腰を曲げて覗き込めば「こっち見ないでよ…」と一気に頬を赤らめて俺の視線から逃げるように顔を逸らす
フフッ…
ま、無邪気にはしゃいでるあなたも可愛いけどな……
あなたがはしゃいでいるとか、いないとか…そんな事よりも、一緒に過ごせる時間が嬉しくて…
____________ヤベェ……
何か、俺がニヤけてくる…//
・
黒尾「んじゃ、そろそろウチ行くか〜」
展望台からの景色も満喫したことだし…と、エレベーターへ向かって歩き出す
あなた「クロお祖母ちゃんの御飯、超〜久しぶり!楽しみ!!
昔、よくさ「作り過ぎちゃって〜」って言って
クロのお婆ちゃん、煮物とか色んなおかず、お裾分けしてくれたじゃん
ウチのママ
お菓子とか洋食は上手に作るんだけど、和食はイマイチでさ…
だから、クロお祖母ちゃんからのお裾分け、すっごく嬉しかったんだ〜!しかも美味しいし!!」
黒尾「そんな言う程か?毎日食べてると良く分かんねぇけど……
まぁそんな風に言われたら祖母ちゃん喜ぶわ」
たわいもない会話をしながら、エレベーターに乗り込む
あなた「あ、ちょっとお土産見てもいい?」
エレベーターを降りると、土産を見たいと言うあなたと一緒にソラマチをブラブラ歩く
あなた「クロ、ちょっとここで待ってて。すぐ戻るから」
あなたが入って行ったのは、定番の東京土産が並んでいる"いかにも"な土産屋で…
あなたが箱入りのお菓子らしきものを籠に入れる姿をぼんやり眺める
黒尾「(あぁ、そうだよな…アイツ宮城に帰るんだよな…)」
さっきまでの楽しかった気持ちに現実を突きつけられる
あなた「…ゴメン。お待たせ、クロ。
……ん?どうかした?」
黒尾「…別に。もういいのか?…んじゃ、行くか。それ、持つから貸せよ」
「いいよ、大丈夫だから…」そう言うあなたから半ば強引に紙袋を取り上げ、並んで駅に向かって歩き出した
黒尾「………………」
あなた「……クロ?」
あなたは俺を見上げて、一瞬不思議そうな表情をして…次の瞬間には「楽しかったね〜」と笑っていた
俺はあなたと沈みかけている夕陽を交互に見つめながら「____________夕陽は人を寂しくさせる」と昔誰かが言っていた言葉をぼんやりと思い出していた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。