第106話

球拾いナメンな!
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2021/01/15 05:30
黒尾〈へぇ〜……。影山、全日本ユースの強化合宿に招集されたの?流石だね〜〉


あなた「で、月島くんは別の合宿に参加してるんだって。"擬似ユース合宿"だってさ」


黒尾〈……ん?"擬似ユース……"何だそれ?〉






最近ではすっかり勉強の息抜きとして、クロとお喋りをするのが習慣になっている



毎日ではないけれど、週2、3回?くらいの頻度……





どちらからともなくメールのやり取りが始まり…結局どちらかが電話を掛けて、他愛もない会話が始まる






あなた「ん〜っとね……。県内の有望な一年生だけを集めて、宮城県全体のレベルアップを目的とした合宿らしいよ」


大地から聞いた話を思い出しながら、思い出したままを口にする



黒尾〈ふ〜ん…ノブカツくんが"有望"ねぇ〜……〉


あなた「んっ?!ノブカツくんって誰?」


突然知らない名前が出てきて、電話の会話なのに首を傾げてしまった



黒尾〈あ〜…それはまぁ、気にすんな。____________で、チビちゃんは?〉


あなた「えっ…日向くん?何で?!」


黒尾〈だって……あのチビちゃんだぞ。同じ一年の影山とツッキー……、しかも変人速攻の相方が"ユース候補"に選ばれたんだ。
「俺も!!」とか言って何かスンゲ〜気合い入れて練習してそうじゃないの〉


あなた「____________クロって……以外と人の事ちゃんと見て、分かってるよね」


烏野の様子をお見通し。みたいな事を言うから、電話越しなのにたじろいでしまいそうになる



黒尾〈ちょっとちょっと〜…「以外と」って失礼なんじゃないの?!
それに、ボクの観察眼は人並み以上ですよ〜〉


あなた「あ〜、そう……?いや…実はね____________」









黒尾〈はぁ〜〜?!
______________ぶっひゃひゃひゃひゃひゃ〉





私は日向くんの"擬似ユース合宿乗り込み事件"を一通りクロに話した



____________まぁ、大地やバレー部の皆に聞いた話をそのまま話しただけだけど……





あなた「ちょっと!クロ?!笑いすぎじゃない?!」


黒尾〈流石だな〜!さっすがチビちゃん!!相変わらず想像の上を行くねぇ〜
しかも、何?"ユース"は逮捕されるかもしれないから"擬似ユース"に乗り込んだってワケ〜?あ〜…、腹いってぇ〜〉





____________クロは大爆笑!!



しかも、そのまま暫く笑いっぱなし……



笑い続けるクロを軽く無視して話を続ける





あなた「たまたま職員室で見かけたんだけど……あの温厚な武田先生が怒るところ、初めて見たわ。恐かったデスヨ……」


黒尾〈で?その後チビちゃんどーしてんの?怒られたからって簡単に諦める柄じゃあねぇよな〜〉


流石…クロ。やっぱりお見通し……



あなた「あ〜…、うん……
結局、毎日合宿に参加してるって。ボール拾い宣言して、マネ業?かな……ボール拾いとか、ドリンク作ったり、洗濯したり……してるみたい」


黒尾〈へぇ〜…やっぱチビちゃんも根性あるねぇ〜
ま、球拾いナメンな!って話だけどな〉


あなた「____________、ん?それって……どういう意味?」


黒尾〈ん〜?そのまんまの意味デスよ〉


あなた「………?よく分かんない」


黒尾〈まぁ、あなたには分かんなくても良いんデス〜〉



……何か今、軽くあしらわれた気がする。私にはバレーの事が分からないと思って揶揄っているんだろう。まぁ、確かにそうだけど……

ならば、少しくらい説明してくれたらその優しさに感謝の1つもするのに…


電話越しでも感じる上から目線に少しムッとする



あなた「………それって…何か……ムカつく…!私にはバレーの事は分からないと思って!」


黒尾〈あ〜…悪ぃ、悪ぃ。悪気は無かったんだって。ただこの話は、し始めると長くなるからと思って。……そんなヘソ曲げんなって
……っと、そろそろ休憩終わりな〜〉


あなた「えっ?!ちょっと、クロ!
「ボール拾いナメンな」の意味教えてよ!」


黒尾〈嫌だね〜!お前と喋ってっとキリがねぇんだよ!
ったく、ずっと声聞いていたくなんだろ……
……あ、あ〜……。ん"ん、…んじゃ、またな!____________ツーーッ、ツーーッ、ツーーッ……〉



最後はクロが一方的に電話を切ってしまった






____________何?あれ……


教えてくれても良いじゃん!気になるじゃんか………


っていうか、何か……最後に何か言ってた?






あなた『クロのケチ!気になるから、教えてよ!
ってか、最後になんて言ったの?ちょっと聞き取れなかった』


すかさずメールを送る












おかしいな……












いつもはすぐに返事が来るのに


その日は、いくら待ってもクロからの返事は来なかった












研磨 side





夜久「なぁ、研磨〜。何か…黒尾の様子おかしくねぇか?
ったく、春高まで一ヶ月切ってんだよ!主将が気ぃ抜けてたらチーム全体が緩むんだよ……」


研磨「うん…。朝からあんな調子だね」





放課後の部活前、夜久くんに話しかけられた



確かに、朝からクロの様子がおかしい……





春高出場が決まってからというもの、今まで以上に練習に気合いが入っていたのに…



____________今日は朝から溜息ばっかりだ









ま…どーせ、またあなたなんじゃないの……?



研磨「____________分かりやす過ぎデショ…クロ」

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