第2話

2
43
2018/07/14 15:10
かき氷屋のおばさん
いらっしゃい!冷たいかき氷だよー!
やきそば屋のおじさん
焼きそばあるよー!
周りを見れば人、人、人。中には私と同じように浴衣を着ている人もいる。屋台のおじちゃんおばちゃんはかき氷だったり、焼きそばだったり、あんず飴だったりを売っていてどれを買うか迷ってしまう。でも私が1番惹かれたのは…
葉山 花火 ハヤマハナビ(幼少期)
おばちゃん!ヨーヨーやらせて!
ヨーヨー釣りのおばちゃん
はいよ。1回100円ね。これで取るんだよ。
葉山 花火 ハヤマハナビ(幼少期)
はーい!
ヨーヨー釣り。可愛い小さな風船がぷかぷか浮いていて、色とりどりのヨーヨーに胸がワクワクする。
葉山 花火 ハヤマハナビ(幼少期)
よし!
貰った紐のようなものをそっと水につける。やる前から決めていたオレンジ色で少し大きめのヨーヨーを狙う。ヨーヨーの指を通すゴムの部分に紐の金具を引っ掛ける。
葉山 花火 ハヤマハナビ(幼少期)
やった!……あっ
『チャプン』
私の紐は切れ、ヨーヨーは落ちて水に少し沈んだかと思うとまた浮き上がってきた。
ヨーヨー釣りのおばちゃん
ごめんね、また来てね。
おばちゃんは私の切れた紐を受け取ると後ろの人に新しい紐を渡す。
葉山 花火 ハヤマハナビ(幼少期)
はぁ。
ため息が出た。せっかく取ってお母さんに見せようと思ったのに。私はすぐにその場を離れようとした。
ヨーヨー釣りのおばちゃん
あんたすごいね!いっきに3つも取っちゃうなんて。
(3つ!?)
びっくりして振り返る。
???
あははっ!ありがとうございます!
そこにいたのは私と同じくらいの男の子だった。そんな子が自分は1個を取るのにも苦戦したというのにいっきに3つも取ってしまうなんて。余計に悲しさが倍増する。
???
はいっ!あげる!
葉山 花火 ハヤマハナビ(幼少期)
……え…?
びっくりした。気づけばその男の子は私の目の前にいて、さっき自分が取ろうしていたオレンジ色のヨーヨーを私に差し出している。
葉山 花火 ハヤマハナビ(幼少期)
い、いいの?
男の子
うん!いいよ!欲しかったんだよね?
葉山 花火 ハヤマハナビ(幼少期)
うん!ありがとう!
私は喜んで男の子からヨーヨーを受け取った。知らない人から物は貰っちゃだめというけれどこの男の子からなら大丈夫だろうと思う。
葉山 花火 ハヤマハナビ(幼少期)
でもヨーヨーってすぐしぼんじゃうんだよね…。可愛いんだからずっとそのままでいいのに。
男の子
そうだね、でもそういうもんだよ。
葉山 花火 ハヤマハナビ(幼少期)
そっかぁ。
男の子
…あっそうだ!また来年も取ってあげるよ!
葉山 花火 ハヤマハナビ
ほんと⁉︎
男の子は「うん!」というと右手にピンク色のヨーヨー、左手に黄色のヨーヨーを持って遊び始めた。私も同じように手を動かしてみるけどうまくいかない。少し経つと私はお母さんに呼ばれて帰ることになった。男の子はまだここにいるみたいだ。
葉山 花火 ハヤマハナビ(幼少期)
またね!来年ね!
男の子
うん!来年!








でもそれから私たちが会うことはなかった。来年もヨーヨー釣りに行ったけど男の子はいなくて、今年はあれから丁度10年経つ年だ。あの時が小学校1年生で今年高校2年生。10年も待つあの男の子は一向に現れる気配がない。

プリ小説オーディオドラマ