※現パロ
※夢主が炭治郎のことが好き描写あり
※「告白に失敗する話」の続編です
次の日の朝。
毎日禰豆子ちゃんと炭治郎先輩と一緒に登校していたが、昨日の今日で顔を合わせられないと思い、禰豆子ちゃんに『ごめんね、学校に用事あるから先行くね!』と送り、ごめん!と謝るうさぎのスタンプを押す。
禰豆子ちゃんからの返信は早く、『分かった、気をつけてね!』の1文だけ返ってきた。
この1文だけで禰豆子ちゃんの優しさが滲み出てきていてじわじわと罪悪感が募る。
炭治郎先輩達と鉢合わせしないように、いつもよりかなり早く家を出る。
お母さんに「禰豆子ちゃんは?」と聞かれたが「今日は用事があるから別だよ」と言っておいた。
何気にこの通学路を1人で歩くのは、初めてかもしれない。
いつもは禰豆子ちゃんと楽しくおしゃべりしながら登校していた。
そんな私達を炭治郎先輩は少し後ろで微笑ましく見ていた。時々話を振ると、笑顔で受け答えをしてくれていた優しいお兄さんだった。
いつから「優しいお兄さん」として見れなくなったんだろう。
私が好きにならなかったら、今日も3人で仲良く登校できてた?
3人で一緒にいられるという当たり前を何も考えずに告白したせいで壊してしまったんだ、という事実に今更気付く。
きっともう、あの時のようには戻れない。
じわ、と段々目頭が熱くなってくる。
唇を強く噛み締めても、生暖かいそれは私の頬を伝っていった。
「あれ?あなたちゃんじゃん。こんな時間に珍しいね、どしたの?」
突然後ろから声を掛けられた。
ビク、と肩が大きく揺れてしまう。
何も言わない私を怪しいと思ったのか、声を掛けたその人は私の方をグイ、と力強く引っ張った。
「あ、我妻…先輩」
涙を拭く時間も与えられず、また泣き顔を我妻先輩に晒してしまった。
でも昨日散々我妻先輩に励まされてしまったんだ。もう心配かけさせないように、涙を無視して明るく振る舞う。
「我妻先輩って登校するの早かったんですね!…あぁ!風紀委員だったんでしたっけ、我妻先輩てば金髪だから風紀委員だってたまに忘れ」
「あなたちゃん」
私の精一杯の明るい声を遮った我妻先輩は、先程の私より歪んだ顔をさせていた。
なんで、我妻先輩が泣きそうなの。
「せ、先輩…?」
どうしたんだ、と思い我妻先輩に近づくと、握られていた腕を再度引かれる。
私は体勢を崩し、我妻先輩の胸に飛び込んでしまった。
我妻先輩は昨日のように私を抱きしめながら肩を震わせる。
「いいよ、いいんだよ俺の前で我慢しなくてもさぁ。こっちが泣きたくなる位酷い音させないでよ…」
私を抱きしめる力が、ぎゅうっと強くなる。
「こんな酷い音させるくらいなら、俺を好きになってよ」
「え」
バッと我妻先輩を引き離すと、涙を浮かべながらも真剣な眼差しをしていた。
冗談…ではなさそうな雰囲気だ。
きゅ、と唾を飲み込む。
「俺は炭治郎より情けなくて頼りないかもしれないけどさ、あなたちゃんに誰よりも優しくするし誰よりも幸せにする。こんな酷い思いなんてさせない。」
弱ったあなたちゃんにつけ込むような形でごめんね、でももう見てらんないの。
我妻先輩の手が、冷えた私の手を包み込む。
「あなたちゃんの悲しい気持ち、俺が打ち消したい。
俺じゃだめですか」
涙をポロポロと零しながら切実にそう聞いてくる我妻先輩。
急展開過ぎて頭が追いつかない。出ていた涙も引っ込んでしまった。
私が答えられないままでいると、「急だったよね、ごめん」と謝る先輩。
「でも俺本気だからさ。これから風紀委員の仕事あるから先行くけど、また昼休みあなたちゃんのクラス行くから。それまでに考えておいて。」
そういって私を置いていく先輩。
遠ざかる後ろ姿を見て、へた、と地べたに座ってしまう。
後から激しくなる動悸。
私、今、告白された?
我妻先輩が?私を?
いつから?
心と心臓が酷く焦る。
ああでも、さっきまで身体に纒わり付いていた鉛のような重さの感情はどこかに消えてなんだか軽くなった気がする。
もう一度、我妻先輩が歩いていった方向を見つめる。
先程握られていた手は、じんわりと温もりを取り戻していた。
*
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。