第5話

[夢]やっと渡せた。
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2020/02/22 14:57
※キメ学軸
「バレンタインデー」では恋愛要素あんまないなーと思ったし折角なのでキメ学軸も無理矢理書いてみました。



今日はバレンタインデー。
女の子がまんまと製菓会社の策略に騙され、意中の男に狂ったようにチョコレートを渡す愛の祭典。
私もその騙されている女の1人。今年こそ気になる男の子にチョコレートを渡すんだ。

そう意気込んで作った、フォンダンショコラ。
早くも渡すタイミングを逃してしまいました。
「ねーずっこちゃぁーん!!」
通学路、学校まで一本道の大通りで突然そんな奇声が発せられる。
「ムー?」
私の隣にいるフランスパンを咥えた美少女…竈門禰豆子ちゃんは、なんだなんだと声がした方へ振り返る。
そこには先程までいなかったはずの我妻善逸がニコニコしながら立っていた。
「だめだよ善逸くん、バレンタインデーだからと言って好きな子に図々しくチョコレートをねだろうとするのは。」
今日は炭治郎くんが日直なので、私が禰豆子ちゃんガードマンだ。
「ちーがーうーから!!はい!これ、禰豆子ちゃんに!」
サッとバッグから取り出して禰豆子ちゃんに何かを渡す。
「チョコレート…?」
「ムムー?」
禰豆子ちゃんは首を傾げ、ピンク色の箱をじっと見つめる。
「そう!!海外では男の人も女の人に渡すから…だから俺も禰豆子ちゃんに渡したくて」
とくねくねしながら善逸くんは言う。
私は思わず持っていた鞄をぎゅ、と握りしめる。今年こそ渡したかったのに、完全に渡せる雰囲気じゃなくなった。
やっぱり善逸くんは禰豆子ちゃんが大好きなんだ。分かってはいたけど、今日はいつもより胸が苦しい。
「…ムー?」
禰豆子ちゃんが私の顔を覗き込み、心配そうな目で私を見る。
ハッとして我に返る。
「あーー…なんか私おじゃま虫みたいだから先行ってるね!じゃまたあとで!!」
2人の反応を見ずにその場から即座に離れる。
申し訳ない気持ちもあるけど、あそこに居るのは正直限界だった。
鼻の奥がツンとするが、泣かないように早足で学校に向かって行く。
炭治郎くん、ちゃんと禰豆子ちゃんガードマン出来なくてごめんね。
2月14日の始まりはドン底から始まった。

*

「はぁーあ…これ、どうしよう」
放課後。私は教室で、昨日精を出して作ったフォンダンショコラとにらめっこをしていた。
お昼にカナヲちゃん達と食べちゃえばよかったかも。
でもそう出来なかったのは、多分まだこれを善逸くんに渡したい気持ちが拭いきれて無いからなんだろう。
もういっその事捨ててしまったほうが気持ちも晴れるかもしれない。
「勿体ないから、食べちゃおうかな…」
「それ、1人で食べんの?」
突然私に降りかかる声。
顔を上げると「太るぞ」と笑う善逸くんがニヤニヤしながら立っていた。
「余計なお世話だよ!!私は食べても太らない体質だと思ってるからいいの!」
ぷい、とそっぽを向いてしまう。ああ、私ってば本当に可愛くない。こんなだから善逸くんに振り向いて貰えないんだ。泣きそう。
「1人で食べるって…これ相当大きいけど」
「ごめんもう帰るから」
立ち上がって鞄にチョコの箱を入れ、立ち去ろうとする。もう涙腺が限界だった。
「ま、待って!」
善逸くんが私の腕を掴む。
「そのチョコ、大きいからさ…俺のと交換してよ」
振り向くと、顔を赤くしながらチョコレートの箱を私に差し出す我妻くんがいた。
朝に禰豆子ちゃんに渡したものとは違う、黄色のハート型の箱だった。
「これって…本命?」
「…じゃなきゃなんなのさ」
ぶわ、と顔が熱くなる。ついでに耳も熱い。
「あなた、顔真っ赤じゃん」
「善逸くんこそ」
「違うから!これ夕日が赤いせいだから!…で、交換してくれんの?」
「うん、もちろんだよ」
善逸くんに私の箱を渡す。
善逸くんの箱を受け取る。
「やっと…やっと渡せた」
ふにゃりと笑う善逸くんに、「こっちのセリフだよ」と呟く。

結局私が作ったフォンダンショコラは大きすぎたので、2人で仲良く食べることになったとさ。




*2/22 少し修正入れました

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