そして
2回戦が始まり、轟くんと緑谷くんが、
戦っていた。
音声は詳しく拾えないため、2人が何を話しているのかは分からない。
でも
緑谷くんが何かを言った直後、
心做しか轟くんの顔が晴れたように見えたのは
気のせいではないと思う。
そして、勝負はついた。
ボロボロの緑谷くんは気を失って場外に、
対して轟くんは場内で呼吸を荒らげながらも立っていた。
緑谷くんのことももちろん心配だけど、
本命は轟くんだ。
彼が今何を考え、どんな結論を出したのか、
知りたかった。
余計なお世話かもしれない。
でも私は、轟くんを放っておくことなんて出来ない。
リカバリーガールが私にしてくれたように、
寄り添い、話をしよう。
そしたらきっと、いつもの優しい轟くんに、
戻ってくれるはずだから。
ゆっくりと歩いているその背中に声をかける。
そう言って振り向いた轟くんは、
記憶の中のどの轟くんよりも優しくて、
幼なじみのあの男の子によく似た目をしていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!