目の前で震えながら謝っているあなたは、すごく小さく、幼く見えた。
あなたが何に脅えているのかは、正直全く分からない。
でもその対象が、俺じゃないことは分かった。
いくら名前を呼んでも、拒絶される。
次第に自分がどうしたらいいのか分からなくなってきて、焦りが生まれてくる。
顔を隠すあなたの両手から、涙が溢れている。
その痛々しい姿に、
俺はいてもたってもいられなくなった。
あなたを覆うようにして、抱きしめる。
まるで俺の声が聞こえていないような様子のあなたに俺の声が届くように、、
俺はあなたに出したことがないくらいの声量を出した。
まるで蚊の鳴くような声で、俺の名前を呼んだあなた。
そして言いながら気づく。
俺は、あなたのことが好きなのだと。
あなたが弱っているのを見ると、胸が締め付けられるように苦しい。
こんなに近くにいるのに、俺はあなたの苦しみに、
何一つ気がついてやれなかった。
悔しさでどうにかなりそうだ。
ならせめて、今からでも、
あなたの力になってやりたい。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。