私とカフェでくつろいでいた時と違って、少し轟くんの顔が焦っていたように見えたのは、気の所為だろうか。
体育祭まであと少し。
覚えなくてはならないことが、山ほどある。
いちごパフェを食べたからか、今の私は気分がいいのだ。
学校、
課題、
自主勉、
個性のコントロールの特訓、
学校、
課題、
自主勉、
個性のコントロールの特訓……
そうして時はあっという間に過ぎて行き、
遂に体育祭は明日にまで迫っていた。
その間カフェには行っておらず、轟くんもまた、特訓に明け暮れていたようだった。
お互いが良い結果を残せるように必死なのを知っているから、連絡も控えている。
当たり前に毎日顔を合わせていた轟くんと会えない日が続くと、やはり寂しくなるものだ。
でも轟くんの邪魔にだけはなりたくないので、散々迷った末に、1文だけメールを送ることにした。
『明日、頑張ろうね。』
その日のうちにはメールは返ってこなくて、
返信を見たのは当日になった。
『おう』
たった2文字だけだったけど、私には充分で。
頑張るぞって、思える2文字だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。