夜9時。
私は今、病院の研修棟にある自室で休んでいる。
学生は夜遅くまで実習が出来ないので、忙しい今でも私は蚊帳の外なのだ。
今も外ではサイレンが鳴り響いている。
そんな中で仮眠なんて取れるはずもなく、私はソワソワしながら部屋にいた。
怪我人が多いため、救急車が総出で出払っているのだそうだ。
事件自体はひとまず落ち着いた為、朝になればいつも通りの日常が戻ってくるだろう。
コンコン
話を聞くと、ヒーロー殺しに偶然遭遇した高校生の1人の腕が酷い怪我らしく、
私の個性が必要なんだそう。
見た目の特徴を聞いた限りでは、焦凍くんではなさそうだったが、後遺症のことを考えても、早く向かわなければならない。
私は脱ぎ捨ててあった白衣を羽織り、治療室へと早足で向かった。
︎︎
目の前の男の子は、安心した顔で眠っている。
個性が聞いてきたのだろう。
しかし私の方は、
息切れとだるさが酷い…
やっぱり、"赤"を使うと厳しいな…
今にも倒れそうな重い体を引き摺って、私は再び自室へと戻った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!