少し話してから、お互いが落ち着きを取り戻し始めた時、
俺は1番気になっていた話題を向ける。
もしかしたら、あなたが_なんて淡い期待は、
懐かしそうに目を細めるあなたを見た時に
最高潮へと達した。
俺が、まだ個性が出たばかりの時、
今と違って炎を出すことにも抵抗が無くて、
いつも決まって俺の炎が綺麗だと言ってくれたあの子のために個性を見せていた。
その言葉が、何よりも嬉しくて…
俺は何度でも炎を見せた。
俺はあの子の個性が好きだった。
優しく俺を包み込むあの光が好きだった。
思い出せばだすほど、納得がいく。
あの子は医者をめざしていた_
あなたは今医学部に入っている。
あの子は光を傷口に当てて治癒をした_
あなたの個性は治癒だ。
あの子は大声が出せなかった_
あなたはさっき、大声が出せないと言っていた…
少し考える素振りを見せていたあなたが、再び話し出す。
俺はそれを、静かに聞いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!