あれから2週間。
私はすっかり、ここのカフェで勉強するのが日課になってしまった。
学校が終われば制服のままカフェに来て、1、2時間くらい滞在する。
時間帯でいえば、夕方の4時〜5時。
あの男の人がここへ来たのもそのくらいの時間帯だったのだから、
また同じカフェに来れば会えるかと思っていたけれど…
会えない所ではなく、見かけることもない。
カフェ自体、とても居心地がいいので、ここで勉強することはやめる気は無いけれど、
こうやって眺め続けるのはそろそろ止めた方がいいのかもしれない。
一見すると冷酷そうに見えて、でも実際はすごく優しくて、ちょっとだけ天然で。
顔が整っていて、優しい声をしていた。
そんなあの子に、あの男の人は凄く似ていた。
でもひとつ違うのは、全く笑わないってところ。
記憶の中のあの子は、いつも目を輝かせていた。
大口を開けて笑うこともあったし、愛想笑いも少しはしていた。
けれどあの時あった男の人は、手こそ優しかったけれど、雰囲気はなんだか怖くて、
私の知っている男の子じゃなかった。
それでも、仲良くしたいだなんて、
初対面かもしれない男の人に対してこんな事を思ってしまうなんて、
私は少しおかしいのかもしれない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!