前の話
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目の前にいたのはつんつん頭の雄英生だった。
小声で訴えかけられたかと思うと、腕を引っ張られ、気がつくと壁に隠されていた。
知らない人にいきなり話しかけられたことも驚いたが、それよりも轟くんの声がしたことに驚いた。
何やら緑髪の男の子と話をしている。
確か、障害物競走1位の人だ。
─緑谷くん、だっけか。
きっと、轟くん以外の人が取り込み中だったのなら、大人しく従っただろう。
けど……
私が一見大人しそうな人間に見えたのだろう。
反論されると思っていなかったのか、目の前のつんつん頭さんは黙ってしまった。
隣でどれだけ目を釣りあげているかも知らず、私はつんつん頭さんを黙らせる。
轟くんが話し始めたと同時に、つんつん頭さんは私に突っかかるのをやめた。
宣戦布告をされたような気がしたけれど、この際はそんなことどうだっていい。
私は、盗み聞きだろうとなんだろうと、
この話を聞かなければならない気がした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。