社長「そこ、座って」
「はい」
私たちは机を挟んで向かい合わせに座る
そして彼はカバンから1冊の雑誌を取り出した
社長「これ、知ってるよね?」
「もちろんです、急遽私を載せていただいた雑誌ですから」
社長「これを見たとある事務所から、あなたちゃんをモデルとして雇いたいとスカウトがカメラマンさん経由できてね」
私は驚きすぎて言葉が出なかった
社長「どうするかは君に任せるよ、でも」
「でも…?」
社長「もしこの仕事を引き受けるのであれば、今後メンバーと一切関わらないでほしい」
「えっ…」
社長「この話はもちろん、あなたちゃんのためでもあるんだよ」
「はい、おっしゃりたいことはなんとなくわかります」
大人気アイドルグループと駆け出しのモデル
それがスキャンダルにでもなったらお互いに不利益しかない
ってことは彼との関係は…?
「あの、社長」
社長「ん?なに?」
「ひとつお聞きしたいのですが…」
「私と大介は幼なじみでよく家を行き来する仲なんです」
「その場合って…」
社長「もちろん一切断ってもらうよ」
その一言に私は何も言葉が出なかった
社長「君がある程度認知されるようになったら、みんなとの関係も戻ってもらってもいいよ」
社長「そろそろスタイリストの期限も近いし、しっかり考えた方がいいよ」
「わかりました、ありがとうございます」
社長「じゃ、僕はここで」
と言って彼は部屋から立ち去った
衝撃的すぎて私はしばらく動かなかった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!