『うっ …… 』
「ちょ 、大丈夫 ?」
『大丈夫 ……… 』
つわりによる吐き気と怠さ 。
それは想像以上に辛かった 。
私たちは廉のお父さんに了承を貰い 、お父さんのお屋敷に住んでいる 。
だけど 、つわりのせいで外に出ることなんて出来ずにずっと屋敷の中に引きこもっている 。
「あなた 、今日もご飯食べへんの ?」
『ごめん 、無理 …… 』
「でも少しは食べんと体持たないで ?ほら 、」
『うん …… 』
廉に言われ 、ゆっくりとご飯を口に運ぶ 。
「よく出来ました」
優しく頭を撫でてくれる廉 。
『廉 、ありがと …… 』
「気にせんでええよ 。あなただって 、俺らの子の為に頑張ってくれてるんやから」
『うん』
「あ 、名前どうする ?」
『どうしよっか』
私の大きくなったお腹を撫でながら 、ん〜 、と悩む廉 。
「あ 、奏多とかどう ?」
『ちょっと微妙』
「えー !だったらあなたが考えてや !」
『嫌 、廉が考えて』
「 ………… あ 、"れおん"とかどう !?」
『どんな漢字 ?』
「俺の廉に 、音 !これで廉音 !!」
『うん 、いいかも !それにしよ !』
「廉音〜早く産まれてこいよ〜 !パパとママが待っとるからな !」
『廉音 、元気に産まれて来てね』
「あと3日で産まれるんやろ !?楽しみやわ〜 🎶」
『あくまでも 、予定だか ……… っ !』
「ちょ 、あなた !」
『痛 ……… れっ 、』
「陣痛やな 、病院行かんと !」
執事さんに出してもらった車を使って 、急いで病院に向かう 。
だけど 、向かっている間にも痛みは酷くなる 。
『っ ……… 痛い』
「大丈夫 、大丈夫やで」
隣に座る廉がそっと私の背中を撫でて 、落ち着かせてくれる 。
運「着きました」
「あなた 、歩ける ?」
『っ 、うん』
痛みを堪えながら入口に向かうと 、看護士さんたちが分娩室の方に誘導してくれた 。
『っ 、廉 ……… !』
「あなた 、頑張れ」
廉の手をギュッと握り 、お腹に力を入れると 。
オギャーオギャー
少しして赤ちゃんの泣き声がした 。
『 ……… はぁはぁはぁ』
「あなたっ !!(ギュッ」
『廉 ……… 泣』
「頑張ったなー !ほんまにありがとう !」
『うんっ 、!』
「廉音〜 !ほら 、あなたに似とるで !」
『そう ?でも 、この目とか廉にそっくりだよ !』
「ほんま !?」
嬉しそうに喜ぶ廉を見てると 、私も自然と笑顔になった 。
?「廉っ !!!!(バンッ」
病室で廉音をあやしていると 、突然開いたドア 。
「あ 、父さん !」
『お義父さん !お久しぶりです』
廉父「あなたさん久しぶり 。それより 、子供が産まれたって本当か !?」
「ほんまやで 、ほら」
廉父「おー !!」
『お義父さん 、どうぞ』
廉父「ありがとう 。可愛いなぁ」
お義父さんが廉音を優しく腕の中で揺らす 。
廉父「それで 、この子の名前は ?」
『廉音です 。廉に 、音と書きます』
廉父「ほう 、いい名前だな 。大切に育ててくれ」
「また仕事 ?」
廉父「ああ 、たくさん仕事が残ってるからな」
『頑張って下さい』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!