前の話
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………死にたい。
私はいつもそんなことを思う。
どうしてそんなことを思っているのか、自分でも良く分からない。辛いことなんて、別に何もないはずなのに。
だけど、死にたい。そう思ってしまうのは何故なのだろう。
そんな私は今、学校の校舎の裏に来ていた。
今はもう夜遅くなので、時間的に教師たちは既に帰っている。
この校舎裏は普段でも人が来ることが少ない。そして、ほぼ全く人目にもつかない。この時間で私はここに来て、あることをしている。
私は無言になったまま、鞄からあるものを取り出す。取り出すと白いタオルで包んでいたので、それを剥がす。
そしてそのタオルが包んでいたもの、ナイフが姿を見せる。
そう、私が今からしようとしていることは自殺だ。
私はナイフを両手で持ち、自分の喉に刃を向けた。そしてゆっくりと、自分の喉に向かってナイフを近づけていく。
だけど近づけていくうちに、手が震えて、肩で息をするほどに息が荒くなっていく。
私は自殺をしようとする時、いつもこうだ。
この時だけ「怖い」という感情が出てきて、最終的には自殺を止めてしまう。毎回そうだった。
私は普段、感情がとても薄い。だから表情が変わることが全くない。だけど、今だけは違う。
死ぬことに対して恐怖を感じて、怯えてる。
私は思いっきりナイフを上に上げて、喉に向かって振り下ろした。
???「止めろ!」
だけどその手は、突如として聞こえたその声によって止まる。ナイフが刺さる寸前で。
私はナイフを喉元から離し、声が聞こえた方に顔ゆっくりと振り向け、その声の主の正体を確認する。
その正体を知った私はナイフを地面に落とした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。