私は思わず後ずさりをした。
どうしよう、何もできない……!
龍騎は嬉しそうに笑った。
ーー怖い!!
龍騎は、握りこぶしを作って襲ってきた。
ーーもうだめ、……。
私は諦め、目をつぶった。
龍騎の手が近づき、顔に衝撃がーーーーーー
なかった。
………………………この声。
ずっと聞きたかった、あの人の声。
私は目を開けると、そこには龍騎の手をしっかり握った世良がいた。
私は自然と涙が流れた。
世良が、私を助けてくれた……。
龍騎の顔が真っ青になった。
遠くから、パトカーの音が聞こえる。
龍騎は、力なくその場に倒れ込んだ。
やがて、警察に連行された。
今、世良と公園に二人きりでいる。
世良は、優しい笑みで私を見た。
そのとき。
世良が私を思い切り抱きしめた。
えっ、なにこれ!?
世良と、ゆっくり目が合う。
そして、赤い顔が私に近づいて。
静かに唇が合わさった。
私は、心臓が跳ね上がった。
そっか、好きっていうのは、
ーーこういうことなんだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!