次の日の学校の帰り。
私は、自動販売機でみかんジュースを買った。
……そーいえば、世良もこれ、好きだったな…。
小学校の頃は、よく帰りにこっそり買ったものだ。
…まぁ、先生に3回ばれたんだが……。
あぁ、また世良のことばっかり。
何してても必ず世良のことになる思考回路をなんとかしたい。
私は、葵先輩なんだから……。
家に帰ると、タイミングよく葵先輩から電話が来た。
私は一瞬言葉につまったが、パアッと明るくなってすぐにOKをした。
でも、心のもやもやは消えない。
先輩と6時に待ち合わせをした。
今はまだ5時10分だし、着てく服でも決めてようと、クローゼットの前に立った。
{世良side}
オレはまだ、手当たり次第走り回って歌恋を探していた。
あのまま誤解されたくはねぇ………!
そのとき、新しくOPENしたケーキカフェの店の前で葵さんが立っているのを見かけた。
葵さんは、オレも歌恋を通じて知り合った。
何かといい人だが…、今日は妙な胸騒ぎがする。
葵さんはこっちを振り向いた。
オレは一瞬意識が遠のいた。
まさか、オレと葉月を近づけるために、葉月を悲しませないように、諦めて葵さんを……!?
自惚れているみたいだが、それだけは確信だった。
根拠はないのに、なぜか。
そう思うと、自然と冷静になった。
オレは先輩に一礼して、その場をさった。
ーー歌恋は、渡さない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!