{歌恋side}
私は今、電車に揺られていた。
もう少しでいつもの街に帰る。
私は、窓にもたれかかった。
先輩に、申し訳無いな……。
あんなに私のことを思い、好きでいてくれたのに。
私は、スカートの裾をぎゅっと掴んだ。
ガタタッ
電車のドアが開いた。
私は、一目散にかけでた。
先輩の好意を無駄にしたいために。
私は、手当たり次第駆け回った。
私は、みおちゃんの家の前を通った。
みおちゃんはちょうど、二階のベランダの洗濯物をよしていた。
みおちゃんは慌てて階段を降り、玄関を開けてこっちへきた。
私は、一瞬言うべきか迷った。
ーーでも。
みおちゃんに世良は譲れない。
みおちゃんは少し眉をひそめた。
私は、ひるまなかった。
私とみおちゃんは、しばらく見つめたまま動かなかった。
やがて、みおちゃんが口を開いた。
震える声で言った。
少しだけ胸が苦しくなったが、私だって譲れない。
私はみおちゃんの目を見透かすような目を向けた。
みおちゃんは、言葉に詰まった。
こそこそしないで、勝負しようよ、みおちゃん。
みおちゃんは、うつむいて、家へ入っていった。
私は、みおちゃんに少しお辞儀をして、また走り出した。
公園の近くに行った、そのとき。
もう聞きたくない声が後ろから聞こえた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。