私は、しばらく部屋の前で止まっていた。
本当の思いに気づいた今。
行動することは決まっているのかも知れない。
葵先輩は、私の思いを知ってて、こんなふうに言ってくれたの?
私は、胸が苦しくなった。こんなに思ってくれてる人がいるのに。
でも、私はーー。
私は、自分の思うままに行動した。
{葵side}
部屋をノックする音。
…歌恋ちゃんかな。
オレは、違うとわかっていながら、期待を捨てきれずにドアを開いた。
そういって従業員は、部屋を去っていった。
………やっぱり。
オレは、部屋にある即席のコーヒーをいれ、飲んだ。
ーー歌恋ちゃんがオレを見ていないことは、少し前から気づいていた。
何話しても上の空だったし、そこでオレは、ここまでだと思った。
でも……少しだけ、期待した。
へやに入ってきてくれること。
オレは、完敗だった。
…そういえば。
歌恋ちゃんから手紙をもらったんだ。
オレは、丁寧に開き、文を読んだ。
"先輩へ。
ごめんなさい。やっぱり私は、付き合えません。
わがままな私で迷惑かけました。今まででありがとうございました。"
オレは、そっと手紙をしまった。
………これから向かうところにいる人は、おそらく世良?
できれば、そうであってほしくない。
アイツには勝ちたかったのに……。
気づけば、オレは泣いていた。
そんなに、歌恋ちゃんが好きだったってことか。
歌恋ちゃんが幸せならそれでいい。
オレは涙を拭い、残りのコーヒーを全て飲み干した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。