あのとき私が電車に乗り遅れていなかったら...
私たちは出会えてなかったのかな
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「 やばい遅れる!!!」
しまった...寝坊した...
わたしは髪のセットと軽く化粧をして急いで家を出た。
「 間に合うかなぁ...」
そう思いながらわたしはとにかく走った。
「間に合ったぁ〜」
急いで走ったおかけで時間ギリギリにホームに着いた。
でも自分が乗る電車の扉が閉まりそうだ。
やばい!
「待ってーー!!」
走って扉まであともうちょっとのところで扉から誰かの手が伸びてきた。
『掴まって』
低いけどなにか落ち着きがある声でそう言ったのが君だった。
わたしはとにかく電車に乗りたかったから少し遠慮しながらもその手を握った。
すると
グイッ
と、彼はわたしを電車の中へと引き入れてくれた。
プシュー
そうやって音を立ててわたしのすぐ後ろで扉が閉まった。
あ、お礼言わなきゃ
そう思った時にはもう遅くて、手を差し伸べてくれたらしき彼はいなかった。
もともと電車が混んでいたのもあるが中々見つけ出せなかった。
そうこうしているうちにもうわたしが降りる駅に着いてしまったみたいだった。
あの人には悪いけど今度あった時にお礼を言おうと思い電車を降りた。
今日は親友と一緒に遊ぶ約束をしていたのだ。
ホームで親友がわたしを待ってくれていた。
『ごめーん、寝坊しちゃって汗』
〈今度からは気をつけるように。じゃ行こっか!〉
そうやって私たちは久しぶりに休日を満喫した。
「 楽しかったー!」
〈 久しぶりだったもんねー〉
わたしたちは駅でバイバーイと手を振って別れた。
帰りの電車に乗って今日の余韻に浸っていたら向こう側につり革を握っている君がいた。
あ!お礼!
そう思ってすぐわたしは彼の元へ駆け寄った。
「あの、今朝はありがとうございました!」
彼は最初びっくりした様子で私を見ていたが後から微笑みに変わった。
『よく俺だって分かったね、いいんだよあれくらい。急いでたんでしょ?』
「あぁ...はい笑」
『あ、これ昨日君が落としてたやつ』
そう言ってわたしが今朝付けていた貝殻のついたイヤリングを渡してきた。
今朝落としたかもとずっと探してたやつだった。
「あ!それわたしがずっと探してたやつだ!拾っていただいてありがとうございます!」
『見つかって良かったな。^^』
笑ったときの八重歯がかわいい。
『君って貝殻好きなん?』
「はい!わたし元々海が好きで小さい頃とかによく行ってたんです。そのときに拾ったものを自分でイヤリングにしたんです!」
わたしがあまりにも熱心に話すからか彼は笑った。
「なにか面白かったですか?」
『いや、かわええなーと思って』
「...え?」
かわいいとか言われたのが初めてだったから少し戸惑った。
『あ、もうそろそろ着くな。じゃまた。』
「待って!...」
『...ん?どした?』
「あの、...連絡先交換してくれませんか?」
彼が少しびっくりしているのが分かる。
そうだよね、何してんだ私。初めて会ったばっかなのにもう連絡先交換とか引くよね。
『ええよ』
...え?!
「ほんとに?!」
『うん笑スマホ貸して。』
そう言われて自分のスマホを渡すと、彼は慣れた手つきでわたしのLINEに彼のアカウントを登録した。
『はい』
「あ...ありがとうございます!」
『うん笑じゃまた。』
彼は電車を降りて改札口へと向かっていった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。