第16話

毒素
436
2021/03/27 02:46
どこ。どこにいるの。


後ろにいるぞ。


阿呆。前にいろや。
なんか知らんけど、後ろ向けへんからいつまでも見えへんのや。


後ろ向けんのは、みんな一緒や。


黙れよ。黙って前来いや。


私はここで背中を押すんだ。


話聞けや。
押せるほどの力もないくせに。


だが、お前は押されてくれるだろう。
なんだかんだ、な。


…なぁ、正直に言うから。


なんのことだ。


前にいてくれんと、こわい。


…そのうち怖くなくなるさ。


そのうちっていつ。いつになったら首の痛みはなくなるん。


お前が後ろを向こうとしなくなったら。


じゃあ一生治らんわ。


…私はもうお前の前を歩くことは出来ない。


お願いよ。俺を導いてくれよ。


できるものならな。







声が、遠くなっていく。
いやだ。いやだいやだ。行かないで





「ッ…」


目が機械的に開く。のうみそが張り詰めていたようで、アタマの中身が冷え切っている。

なぁグルッペンさんよぉ。助けても導いてもくれないくせに、なんで、なんでこうして出てくるんよ。俺のこと嫌いか。





俺は、阿呆みたいにすきやで。
まだまだ、ずっと、いつまでも。
お前が死に腐って何年経ってもずっと。
おれはずっと















勝手に独りで苦しい。

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