どこ。どこにいるの。
後ろにいるぞ。
阿呆。前にいろや。
なんか知らんけど、後ろ向けへんからいつまでも見えへんのや。
後ろ向けんのは、みんな一緒や。
黙れよ。黙って前来いや。
私はここで背中を押すんだ。
話聞けや。
押せるほどの力もないくせに。
だが、お前は押されてくれるだろう。
なんだかんだ、な。
…なぁ、正直に言うから。
なんのことだ。
前にいてくれんと、こわい。
…そのうち怖くなくなるさ。
そのうちっていつ。いつになったら首の痛みはなくなるん。
お前が後ろを向こうとしなくなったら。
じゃあ一生治らんわ。
…私はもうお前の前を歩くことは出来ない。
お願いよ。俺を導いてくれよ。
できるものならな。
声が、遠くなっていく。
いやだ。いやだいやだ。行かないで
「ッ…」
目が機械的に開く。のうみそが張り詰めていたようで、アタマの中身が冷え切っている。
なぁグルッペンさんよぉ。助けても導いてもくれないくせに、なんで、なんでこうして出てくるんよ。俺のこと嫌いか。
俺は、阿呆みたいにすきやで。
まだまだ、ずっと、いつまでも。
お前が死に腐って何年経ってもずっと。
おれはずっと
勝手に独りで苦しい。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。