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第8話

鏡の中の大切な人
 私はされるがままに真っ白なウェディングドレスを着せられ、化粧を施された。

 そして天上も壁も床も真っ赤な部屋の真っ赤なキングチェアに座らされ、壁一面を覆う大きな鏡と向き合わされた。

 ダヴィドさんは真っ黒なタキシード姿で、私の横に立つ。
ダヴィド
ダヴィド
俺からのおもてなしは気に入ったかな?
 アベルなら絶対に私を助けてくれるって、心のどこかで信じてた。

 アベルの忠告を無視したのがダメだったのかな?お嫁さんになろう、とか背伸びしちゃったのがいけなかったのかな?

 ……もう、わかんないや。
ダヴィド
ダヴィド
聞けよ
 ダヴィドさんは私の顎を掴み、強引に自分の方を向かせた。痛い!

 殺気に満ちた目から目をそらすと、乱暴に手を離した。

 この人は、嫌でも元いた世界のことを思い出させる。怖い!怖い!怖い!
ダヴィド
ダヴィド
そんなにあいつがいいかよ、お前も!アンナも!
 アンナさんが一体どうしたんだろう。

 こんなに乱暴な人だ、あまり良い話は聞けそうにないけれど。
佳音
佳音
アンナさんと、どういう……?
ダヴィド
ダヴィド
あいつは実質俺の嫁だった!……奪われたんだよ、アベルの野郎に!
佳音
佳音
嘘、でしょ……?
 この人の言うことを信用できない。したくない。

 でもアベルにひどく冷徹な部分があるのも事実で、完全に否定することもできないでいる。
ダヴィド
ダヴィド
お前も知ってんだろ?あの詐欺師がどんな野郎か
ダヴィド
ダヴィド
俺はよ、隠されたものを暴く魔術ことが得意なんだよ。ドレスもアンナも、見つける手助けをしてやった
ダヴィド
ダヴィド
崇めてほしいくらいだぜ。俺の手引きで詐欺野郎から逃げられたんだからな!
 身振り手振りでダヴィドさんは自分を大きく見せる。

 その様子が矮小で幼稚な同級生達を連想させて、ダヴィドさんへの恐怖心が積もる。
ダヴィド
ダヴィド
お前をあそこに置いといた場合、その事実を公にするだけであいつはお縄にかかる
ダヴィド
ダヴィド
異世界の住人を招いたっていう大罪でな
ダヴィド
ダヴィド
ここではな、貴族の殺人は罪に問われないんだよ。お前の世界ではどうも違うらしいがな
 アベルの殺人は、罪に問われない……?

 でも、殺人が罪に問われないとしても。
佳音
佳音
……人を殺した罪悪感はどうなるの
ダヴィド
ダヴィド
かわいそうなお子様かと思いきや、なかなか鋭いところをつくねぇ。気に入った!
 ダヴィドさんは両腕を広げて高らかに笑った。耳障りだ。聞きたくない。

 向かい合う鏡に、この部屋とは全く違う風景が映る。

 深い海を思わせる青い髪、儚げな表情、忘れはしない。

 ……アベル。アベルがいる!
ダヴィド
ダヴィド
詐欺師はお子様を捨てて本命の元にお帰りみたいだな!
ダヴィド
ダヴィド
ああ、いつ見ても美しいよ、アンナァ……
 鏡の中のアベルは跪いて、白のキングチェアに腰をかけたアンナさんの手を取り向き合っている。

 昔の私ならこの構図に興奮して、アンナさんを自分に置き換えて空想したかもしれない。

 でも、今はやだよ。やだよ。私がお嫁さんになりたいよ!アベル!
ダヴィド
ダヴィド
さて、詐欺師の心を暴こう紐解く
ダヴィド
ダヴィド
君が泣こうが喚こうが、俺は構わず続けるからな!
ダヴィド
ダヴィド
まぁ、当然決まっていた覚悟だろうが、覚悟しなおした方がいいかもな?
 高らかに宣言して、ダヴィドさんは私にウィンクした。
ダヴィド
ダヴィド
そうだな、なぜ君が拉致されたか、からだな
 身体の芯から凍てつくような感覚に襲われた。彼はアベルの何を知っているの……?