第3話

システム・転生 2
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2021/07/24 02:31
???
順応ねぇ……
助手は頭を抱えつつ、子供が中に入った機械をごちゃごちゃといじりだした。小難しい顔をしつつも、中の子供のことなどまるで考えてないような手つきだった。
???
仮順応状態にしておきました……。このまま外に出しても大丈夫っすけど、その、生きてはいません
???
よし、今はその程度でいい。もう少し時間が経てば転生システムが体にできるはずだ……はずなんだが
???
はずですねぇ……
二人はまたため息をつきつつその場に腰掛けた。機械の中の目を閉じた子供を見つつ、意識の外に追いやった。
???
名前、つけときますか?いつまでも“子供”じゃ呼びづらいっす。でもあんまり愛着湧くとなー
助手が手に持ったペンを回しながら天井を見る。
???
No.00ナンバーゼロゼロ。それでいいだろ。初めてだからなぁ、こんなことは。前例はないからゼロでいい
二桁……“これ”と同じようなヤツを二桁もこの先生は作る気なんだろうか、と助手は僅かに感じた。

この実験は、そもそも公認されたような高尚な代物ではなかった。であるからして、政府や白い企業から出資を受けられるようなものではない。
かなりの費用がかかるはずのこの実験の資金がどこから出ているのかは、助手の知ったるところではない。

二人でしか研究を進めていないはずなのに、金から設備から随分と充実している。

ワープホールを開けて、別空間に接続する。別空間の粒子とこちらの空間の構成粒子を翻訳変換する機械を埋め込んだこの多空間接続転移装置は、実にリスキーな代物であった。

翻訳変換装置がうまく作用しなければ、こちらの世界に未知の物質が持ち込まれることになる。それ自体も限りなく危険なのだが、ワープホールを開けることが一体どのような弊害も持ち込むことになるのか、ということがまだ明確になっていないのだ。

そして翻訳変換装置がうまく作動しなかった結果、このように充分な置き換えがなされないまま別空間の人間とおぼしき生命が転移され、不完全な状態でここにいる、というわけだが……。
???
コイツをウチで預かり育てることは出来ん。アテがある、ソイツにこれを買ってもらう
???
はあ……
助手はまた機械をいじり始めた。

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