小学校の頃、いじめられた。
原因は、なんやったんやろ?
気が弱かったし、体育はよく休んでたし、先生には優しくしてもらってたから、
標的にされたんやろうな。
学校に行くと上履きがなかった。
一生懸命かいた絵が、ぐちゃぐちゃにされてた。
仲間外れにされた。
弱虫
泣き虫
汚い
はよおらんくなったらええのに
最初は、辛くて辛くて、学校でもよく泣いてたけど、
そのうち、感情を失くす方法を見つけた。
でも、それはただ、聞こえないふりをしてただけ。
本当は、叫びたかった。
悲しいって、
助けてって、
叫びたかった。
おとんにもおかんにもばれないように頑張った。
心配かけたくない、悲しい思いさせたくない、そんな一心で。
でも、ある日耳が聞こえなくなって、病院に行ってお医者さんに学校で何かあったんじゃないかって問い詰められて、
話した。
おとんとおかんには、絶対に知られたくなかったのに。
話しながらも、泣くのは必死で我慢した。
「僕は平気やねん」
そう言ったことを覚えてる。
おかんは、そんな僕を、強く抱きしめてくれた。
「ごめんね」って。
初めて大声で泣いた。
痛みとか、悲しみとか、全部涙に変わって、これまでの涙全部流すみたいにずっと泣いて、
家に帰ると、事情を知ったおとんにまた抱きしめられて、
「大毅にはお父さんとお母さんがおる。1人で抱えんでええ」
そう言っておかんと同じように強く抱きしめてくれた。
おとんが学校の先生に話してくれて、いじめはピタリとなくなった。
小学生やし、先生のいうことは絶対やったから、いじめてた子もすんなりやめて、僕とは関わらなくなった。
それからは、親友とまではいかないけど、友達もできて楽しかった。
でも、耳が治るのにはかなり時間がかかった。
ふとした時に、嫌なこと思い出したり、学校行って自分の物があるか不安だった日もあった。
言われた数々の言葉は、何年経ったって消えるものじゃなかった。
照史君見てたら、昔の自分思い出して辛かった。
照史君は、何が悲しいん?
何を抱えてるん?
僕には、
何かできる?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。